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経済・企業“黒船”EVバス来襲!

中国EV大手BYDはなぜ格安EVバスを日本を売りまくるのか?

 EVバスで日本に積極攻勢をかける中国BYD。その狙いや勝算を花田晋作BYDジャパン副社長に聞いた。

(聞き手・構成=永井隆・ジャーナリスト)

 BYDがEV(電気自動車)バスを安く販売できるのは、EV専用に設計をして量産ができるためです(編集部注:埼玉県久喜市が導入した「J6」は定員25〜31人で1950万円。同クラスの日本のEVバスは約8000万円)。BYDは、電池と車両を量産できる世界で唯一のメーカー。モーター、インバーターも制御システムもすべて内製しており、一貫生産の垂直統合モデルができています。

 中国は世界最大の自動車市場であり、同じく最大のEV市場です。BYDにとってはEVバスを含めて、規模を背景とした経済性を取り込めています。実は、(EVバス生産に当たる)作業員の人件費は日本も中国も変わらず、中国で作れば安価に生産できる時代ではなくなりました。工場の高い稼働率を背景に、一貫生産体制によって原価を大きく低減させています。

火災事故はゼロ

深圳の路線バスは100%EV化を達成し90%以上がBYD製 写真提供BYD
深圳の路線バスは100%EV化を達成し90%以上がBYD製 写真提供BYD

 逆に日本のEVバスは、ディーゼルバスを改造しているうえ、電池もモーターも主要部品を外部から買って組み込んでいます。一貫して量産する体制ができていないため、価格が高くなるのです。BYDのEVバスは、小型の「J6」のほかに大型の「K8」(75~81人乗り)があり、EVバスの累計生産台数は7万台弱。輸出は2割で、欧米、アジアなど世界中に供給しています。

 EVバスを最初に走らせたのは2011年、広東省深圳市で開催された夏季ユニバーシアード会場。初めての輸出は13年のオランダ向け。中国国内ではすでに150都市に納入しています。

 BYDの車両は、安全性の高いリチウムイオン電池を搭載しています。正極にリン酸鉄を採用していて、電池にくぎを刺しても熱暴走しません。BYDのEVバスはこれまで一度も火災事故を起こしてはいないのです。バス会社や自治体の運行会社にとって、さらに利用客にとって、最も重要なのは安全。交通事故や故障などトラブルに対し一つの窓口で対応できて、すぐにバスを現場復帰させることが可能です。

 埼玉県久喜市に導入してもらったJ6は、コミュニティーバスとして運行されています。高齢者や障害を持つ人、妊婦の利用者に負担がかからないよう、ユニバーサルデザインにこだわって設計しました。歩道を歩くお年寄りや子供たちに、排ガスを吸わせることもありません。

 日本の保安基準は世界的にも厳しく、しかもユーザーや利用客の目は厳しい。日本で製品の改善ができ、さらに高い品質のバスを提供できます。さらに、J6は日本仕様として2年前に設計しましたが、シンガポールや香港など、日本と同様に高齢化が進む国で需要があります。日本仕様はガラパゴスなどと揶揄(やゆ)されがちですが、実は世界標準にもなり得る潜在力があるのです。

視界の先に自動運転

 EVバスの先には、自動運転があります。すでに羽田空港の制限区域内で自動運転バスの試験運用を始めており、交通事故をなくすためにも走行データ収集に取り組んでいます。

 EVバスの電池はリサイクル、リユースする計画です。地域やビルなどの蓄電池に再利用すれば、電力不足を解消するインフラとして活用できます。単純に車両を売るだけではなく、問題解決型の企業として社会に価値を提供していければと考えています。

 日本では「中国企業では」というビジネス上の障壁があります。我々はアフターフォローなどのサービスに力を入れ、お客様の満足度を高めていくことで、乗り越えていきたい。同じ中国企業でも、(車載電池最大手)CATL(寧徳時代新能源科技)などは電池における強大なライバル。どこの国の会社かではなく、我々が高い価値をいかに提供し続けられるのかが問われます。

 BYDはトヨタ自動車や日野自動車、独ダイムラーなどと提携していますが、我々が目指しているのはまずはEVの普及です。(談)

(花田晋作・BYDジャパン副社長)

初出:インタビュー BYDジャパン・花田晋作副社長に聞く「電池から車両まですべて内製。だからEVバスを安く作れる」

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