地銀大手コンコルディアはコロナ禍を受けてコア業務純益が5年ぶりに増益。貸出資産は健全化へ=大矢恭好社長
インタビュー 東西2大地銀グループの戦略 コンコルディア・フィナンシャルグループ/横浜銀行
大矢恭好(コンコルディア・フィナンシャルグループ社長/横浜銀行頭取) 「コロナ関連融資は7000億円。貸出資産の健全化を進める」
── コロナ禍を受けた企業の資金需要の急増は、グループの経営にどのような影響を与えたか。
■グループの2021年3月期決算は、横浜銀行と東日本銀行の2行合算で有価証券運用を除くコア業務純益が5年ぶりに増益に転じた。マイナス金利の中でずっと落ち込んできた“本業の利益”がやっと増加へと反転した。両行合計でコロナ関連融資が設定枠も含めて7000億円に達した。信用保証協会による保証付き融資が5000億円、このうち実質無利子・無担保(ゼロゼロ融資)が3000億円、残りの2000億円が自前(プロパー)融資だ。当社は20年3月に自前融資を各支店長決裁で可能になる制度を立ち上げた。ゼロゼロ融資の導入前から顧客向けの支援体制を整えた。(地銀ランキング)
── 将来の融資の焦げ付きへの備えはどうか。
■21年3月期に横浜銀は151億円の与信関連費用を計上した。このうち50億〜60億円が通常の与信費用で、それ以外のコロナでの予防的な引き当てが80億〜90億円だ。22年3月期の引当金は140億円の計画だ。ワクチン接種が広がりつつあるなか、将来に禍根を残さないため将来を見越して貸し出し資産の健全化を進めている。東日本銀は21年3月期に150億円の与信関連費用を計上し、22年3月期はゼロの予定だ。
飲食、小売り、宿泊など内部留保が薄くなったり、ビジネスモデルの転換が遅れている融資先には、貸し出し支援を継続しながら引当金を積み増している。一方、ホテルや飲食、観光は基本的に現金商売で借り入れが起こりにくい。貸し出し規模としては自動車部品など製造業、不動産賃貸業に比べると小さいため、当社の自己資本への影響は小さい。
千葉銀との提携効果も
── マイナス金利下で新たな融資分野への取り組みは。
■シニアローン(普通融資)は競争が厳しいため、スプレッド(利ざや)が取りにくい。コロナで企業向けの資金需要が発生したが、基本的に日本企業の資金余剰は変わっていない。当社はリスク・リターンが取れる貸し出しを増やしていく方針の下に、劣後ローンやMBO(経営陣による買収)ファイナンスなどへの取り組みも強化している。こうしたローンの収益は18年度対比で収益が2倍程度の61億円に、ローン残高では約3倍の3600億円に伸びている。
── 横浜銀は19年に千葉銀行と業務提携した。具体的な効果が出ているか。
■不動産再開発のプロジェクトファイナンスなど、融資額が200億〜300億円に上るような大型案件の場合、今までは「単独では無理」と見送っていたが、千葉銀と一緒だと可能になったりと効果は出ている。5年間で200億円としていた提携効果目標も、さらに上振れを見込んでいる。
── グループにおける東日本銀の統合効果はどうか。
■東京でしっかりした基盤をつくるのが統合の目的だった。東日本銀は不良債権問題の解決に時間がかかったが、人員と店舗の削減やソリューション(課題解決に資する提案型)営業強化の効果もあり、22年3月期から黒字化する計画だ。24年度の東日本銀100周年の時には業務純益100億円を目指したい。
(聞き手=桑子かつ代/中園敦二・編集部)
■人物略歴
おおや・やすよし
1962年生まれ。1985年一橋大学商学部卒業、同年横浜銀行入行。2012年取締役執行役員経営企画部長、18年コンコルディア・フィナンシャルグループ取締役。20年代表取締役社長に就任。59歳。