地銀最大手ふくおかフィナンシャルグループスマホで完結する「みんなの銀行」3年で黒字化へ=柴戸隆成会長兼社長
インタビュー 東西2大地銀グループの戦略 ふくおかフィナンシャルグループ/福岡銀行
柴戸隆成(ふくおかフィナンシャルグループ会長兼社長/福岡銀行会長兼頭取)「スマホで完結する“みんなの銀行”は3年で黒字化目指す」
── 融資先企業のコロナ禍の影響は。
■飲食、宿泊、運輸業など影響を受ける業種は当初想定より限定されており、2021年3月期の信用コストは計画内に収まった。ただ、気の抜けない状況は続く。取引先へは資金繰りだけではなく、本業支援や事業承継など実情に合ったものを展開していく。(地銀ランキング)
── 傘下の親和銀行がある長崎県で、地元有力行の十八銀行をグループ化すると発表して約4年半たつが、昨年10月に合併した。
■(当局からの)ゴーサインが出るまで時間がかかったが、経営統合が決まった後は今年1月にシステム統合するなど、かなりのスピードで対応している。5月からは68店の店舗統合を進め、来年3月に終える。24年までに計100億円の統合効果を実現する計画だ。
店舗も通帳もない銀行
── この経営統合がきっかけになり、金融当局は統合に対する規制を緩和しようとして昨年、独占禁止法の特例につながったとの見方もある。
■特例法で今までより統合はやりやすくなっているし、政府・日銀の支援策も出てきている。ただ、地域貢献は「こころざし」だけでできるものではなく、時間も体力もいる仕事。合併は(効果が出るのに)時間がかかるので、アライアンス(提携)などさまざまな選択肢が考えられる。
── 今年5月に開業した「みんなの銀行」は、スマートフォンだけで、支払い、振り込み、入出金、貯蓄などのサービスが利用できるデジタルバンクだ。どのような目的で設立したのか。
■銀行業への異業種の参入など課題が目の前に迫っている中で、銀行の窓口に来られる顧客は、この10年で4割減った。「みんなの銀行」は実際の店舗もなければ、カード、通帳もない、県境もない。口座開設は10分でできる。スマホを通じてさまざまな活動をするデジタルネーティブ世代が10年後には生産人口の3分の2になるので、こうした顧客に評価されるサービスを今から作り出していきたいと考え、チャレンジした。これからはみんなの声を形にして、丁寧にサービスを作り上げていく。そのために、システム開発は内製化することでスピーディーにサービスを変えたり、追加できたりするようにしている。
社員は160人でうち6割が社外から。テクノロジーなど“腕に覚えあり”の人に来てもらった。開業までの投資額は出資も含めて300億円を超えた。3年後に単年度黒字を目指す。
次は、個人向け事業だけでなく、ビジネスをしている人の舞台裏で黒衣となってローンなどを作り出す法人事業にも力を入れていく。
── 来年度から始まる中期経営計画は。
■まずは「みんなの銀行」がしっかり名前を知ってもらえるように全力投球する。それができれば、いろいろ選択肢ができる。銀行に対する規制緩和の動きも徐々に進んでおり、いろいろなジャンルに入っていける。
こうした動きを捉えながら環境変化や地域顧客のニーズを先取りする形で新事業への挑戦を更に進めていく。長い目で見て「銀行の機能」は残ると思うが、「銀行」という名前が残るか分からない。やらなければならないことはたくさんある。
(聞き手=中園敦二・編集部)
■人物略歴
しばと・たかしげ
慶応義塾大学経済学部卒業後、1976年に福岡銀行入行。常務、副頭取、ふくおかフィナンシャルグループ社長などを経て2019年4月からふくおかフィナンシャルグループ会長兼社長、福岡銀行会長兼頭取。67歳。