地銀再生請負人・「へそ下」整理して再編を=安東泰志
“再生”請負人 ニューホライズンキャピタル 安東泰志 「地銀の不良債権1000億円分を買い取る」
安東泰志 会長
── 今年2月に不良債権ファンドの運営会社「PCR」を設立したが、どのような仕組みか。
■地銀などから経営不振の企業向け債権を時価で買い取る「ポストコロナ・リカバリーファンド」を8月をめどに組成する。ファンドの出資者は地銀が中心で、約100億円でスタートして年内に300億円程度に拡大させる。出資する金融機関は20ほどになるだろう。ファンドは対象企業に増資したり、経営ノウハウのある人材を送り、固定費の削減・営業・マーケティング支援などで収益改善を進める。再建には5〜10年程度かかるが、再生すれば企業価値が上がり、ファンドの利益にもつながる。出資した地銀は一部の資金を回収できる。買い取り総額は5年間で1000億円程度(100社想定)を見込んでいる。(地銀ランキング)
── とはいえ、事業再生はかなり難しいのでは。
■ノウハウが相当必要だ。不良債権投資をするファンドは2000年代前半までは数も多かったが、今は数えるほど。我々は00年代に100件以上再生した実績がある。特にこうした買い取り型の再生は、従来のメインバンクとも協働しながら、一件一件丁寧にやっていくことになる。
── 地銀の現状をどうみるか。
■コロナ対応の緊急融資の結果、過剰債務の中小企業が増え、地銀だけでは解決できない状況になっている。そうした企業は追加融資を受けられず、設備投資もできずに日本全体の潜在成長率をも低下させてしまう。公的機関がさらに貸し付けたとしても債務償還年数を長くし、問題が悪化するだけだ。
── 地銀の再編機運が高まる。
■「へその下」と呼ばれる本当の不良債権比率が分からないままで、地銀同士の統合はできないだろう。しかし、経営不振の企業向け債権を地銀のバランスシートから切り離し、一部資金を回収できれば統合もしやすくなる。
(聞き手=中園敦二・編集部)