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急増したコロナ融資の返済はどうなる、リーマンショック時と比べて低すぎる地銀の与信関連費用率

都内の商業施設への打撃は深刻なのに… (Bloomberg)
都内の商業施設への打撃は深刻なのに… (Bloomberg)

与信関連費用率 コロナでも3割超で0・1%割れ 少なすぎる「企業倒産への備え」=桑子かつ代

「コロナ融資で息をつないでいるが、うまくいかなくて廃業するところが出てくる。信用リスクは今後2年くらい増えるだろう」。そう話すのは佐賀共栄銀行の二宮洋二頭取だ。「地銀の与信関連費用率がこんなに低いのは異常だ」。(地銀ランキング)

 コロナ禍が企業を直撃した2021年3月期決算。日本経済がマイナス4・8%と戦後最大の落ち込みとなった中で、地銀は「与信関連費用」を前期比25%増の4311億円と大きく膨らませた。将来に備えた「予防的な引当金の積み増し」だ。

 与信関連費用は、(1)貸出金の中で将来焦げ付きそうな債権に対し引当金を積んで準備している部分と、(2)すでに回収が不可能になったとして償却した部分からなる。

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『週刊エコノミスト』編集部は、今回の決算を基に、地銀各行の与信関連費用を洗い出し、それをコロナ禍で急増した「貸出金」と対比させた「与信関連費用率」を算出したところ、その伸び率が、実際の経済の落ち込みと比べて、“相当低い水準”にとどまっていることが明らかになった。

 与信関連費用率は、貸出金を分母、与信関連費用を分子として算出する。21年3月期の地銀100行の与信関連費用率の平均値を見ると、0・15%とコロナ前の20年3月期の0・12%から微増だった。調査対象100行のうち3割以上が0・1%割れの事態となった。

 ある経済アナリストは今回の決算が出る前、与信関連費用率を地銀全体で「0・3%程度まで上昇する」と予想していた。しかし、実際には0・1%割れが多数という結果を見て「想定よりも、かなり低い」と驚きを隠さなかった。

利益を上回る与信費用

 過去の与信関連費用率を見ると、リーマン・ショック直後の地銀は、今よりも貸し出しに慎重だったことが分かる。例えば、10年3月期の地銀(上場)の与信関連費用率は0・5〜0・6%の水準に達していた。

 今回のコロナ禍は成長率がマイナス4・8%とリーマン・ショック直後を超える悪化だったことを考えると、本来であれば、それよりも多くの引当金を積む=与信関連費用率が高くなってしかるべきと言える。

 そこで編集部は、21年3月期の与信関連費用率を、仮にリーマン・ショック時の水準と同程度の0・6%と仮定し、全地銀の貸出金の合計額283兆6931億円を基に、与信関連費用を算出したところ、1兆7244億円と現在の4311億円の4倍の額が導き出された。これは編集部がまとめた100地銀全行のコア業務純益の1兆1824億円を上回る水準となり、本業の利益では与信関連費用を賄い切れない計算になる。また、仮にこの額の与信関連費用を計上した場合、経常赤字に陥る計算だ。

 S&Pグローバル・レーティングの吉澤亮二シニアディレクターは、「リーマン・ショック時と比べると地銀の与信コストの引き当ては少なく見える。(与信費用を低く抑えているのは、ゼロゼロ融資など)政府サポートが一定程度働いている可能性があるのではないか」と指摘する。

 ここで政府の資金援助は、あくまで貸し出しであり、返済しなければならない点が重要だ。吉澤氏は「将来景気が計画通りに回復しない場合は、企業の債務返済能力の低下により与信関連費用を大幅に積み増す可能性が高くなる」との見方を示す。

 地銀の一部には、業績悪化で引当金の積み増しをしたくてもできないという事情もある。その一方で、米国の銀行、国内のメガバンクは、それぞれ与信関連費用を積み増している。S&Pグローバル・レーティングの分析によれば、20年度の与信関連費用の比率(連結ベース)は、日本の第一地銀が0・146%とほぼ横ばいにとどまったのに対し、米銀は前年の2倍の2%台、三菱UFJフィナンシャル・グループなどメガバンク3社は0・392%と前年比2倍だった。

 コロナ禍で窮地に立たされた中小企業は、これから融資の返済が出てくる。今後収益が戻らない場合、地銀は先送りにしていた与信関連費用を大きく積まなければならないタイミングが出てくる可能性がある。

(桑子かつ代・編集部)

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