経済・企業 EV世界戦
デザインEV充電器メーカー、「景観生かす高級感あるスタンドを」=永井隆
個性派EVベンチャー2 PLUGO(プラゴ)
デザインEV充電器メーカー 「景観生かす高級感あるスタンドを」
自動車ブレーキメーカーの子会社がEV用充電器を開発した。
(聞き手=永井隆・ジャーナリスト)
── 参入のきっかけは。
大川 私は1934年創業の大川精螺(せいら)工業(東京都品川区)の4代目社長を兼務している。大川精螺は自動車のブレーキ部品メーカー。日産自動車が主要取引先で、私自身、同社のEV「リーフ」に2017年から乗っている。しかし、ユーザー目線ではEVの充電インフラが整備されていない状況に大きな不満があった。東京から軽井沢へのドライブでバッテリーがなくなりかけたこともある。ならば自分で解決しようと18年7月に充電器の専門サービス会社を立ち上げた。社名の由来はPLUGとGOを掛け合わせてプラゴ。(EV世界戦)
── 国内の充電器は20年度に前年度比3.6%減の2万9233基と初めて減少した。
大川 国が普及させようとしているのは高速道路のサービスエリア(SA)や道の駅などにある急速充電器と普通充電器。充電待ちの渋滞や、場所によっては使われないこともある。補助金頼みで無計画、無戦略で設置した結果だ。
一方、当社は高級ホテルや旅館、ゴルフ場といった目的地での充電。駐車は長時間なので、200ボルトの普通充電器で十分。こうした施設の景観を損なわないように、デザイン性を重視した。充電器のソフトウエアを遠隔で更新でき、8月からスマートフォン予約と利用電気料金の課金処理も始めた。こうした仕組みは「テスラの充電器版」と言える。
25年に国内で1万5000基目指す
── 実用化で、気付いた点は。
大川 名門の「茨城ゴルフ倶楽部」(つくばみらい市)は19年4月に3基導入し、今年6月は合計で40回使われた。仮に1基しか設置していなければ、利用が集中する土日はさばききれなかったはずだ。「充電器があるとゴルフに行く気になる」という利用者もいた。同倶楽部での評判が広まり、引き合いが増えた。
── 日本ではEVが普及するほどに、火力発電所の稼働率が上がり、二酸化炭素(CO2)が逆に増える懸念がある。
大川 8月から「グリーン充電」を始めた。これで当社のすべての充電器は再エネ由来となった。グリーン充電とは、グリーンエネルギー証書制度を利用したもの。実際の充電には系統の電気を使うが、利用者は再エネを使用したとみなされ証書を受け取れる。例えばホテルなどの施設は何もしなくとも、CO2を削減したことになる。
── 今後の目標と戦略は。
大川 25年には国内で1万5000基を設置するのが目標。この時点での、充電器シェア10%を確保する。脱炭素の実現には、EVも再エネで給電しなければ意味はないので、EVの使用済みリチウムイオン電池を使った蓄電事業を計画している。EVの電力需要に対応するためには蓄電池活用は必須だ。シンガポールやインドなど海外での展開も視野に入れている。
PLUGO(プラゴ)(東京都品川区)
事業内容:EV向け充電器などの開発・販売
本社所在地:東京都品川区
設立:2018年
資本金:2500万円
従業員数:7人
■人物略歴
●大川直樹(おおかわ・なおき)
1980年東京都生まれ。2002年慶応義塾大学法学部卒業。電通に入社し、携帯電話市場におけるマーケティング業務などに従事。18年にプラゴを設立した。41歳。