経済・企業 EV世界戦
過疎地でEVトゥクトゥクレンタル、大学生ベンチャーの挑戦=永井隆
個性派EVベンチャー1 eMoBi(エモビ)
過疎地で“トゥクトゥク”レンタル 「観光需要取り込んで地方に活気を」
東大と慶応大の学生3人がEVを使ったビジネスに乗り出した。
(聞き手=永井隆・ジャーナリスト)
── なぜEV(電気自動車)で起業を。
後藤 クルマがEV化するのは世界の流れ。いずれ、ハイブリッド車(HV)など内燃機関の出番はなくなる。コロナ後を見据えて千葉県南房総市と長崎県壱岐市で観光客を対象に三輪のEVトゥクトゥクの貸し出しを始めた。(EV世界戦)
南房総は南房総市観光協会と組んで今春から実証実験を開始。現在は協会に車両をリースし、協会が無料で車両を貸し出している。壱岐では「離島」と「レンタル」を掛け合わせた造語「りとれん」の名称で実際にサービスを開始した。壱岐でのレンタル料金は1時間1500円。エモビの公式ホームページから予約でき、クレジットカードやQRコード決済にも対応している。サービス店舗は南房総では3カ所で各1台、壱岐では2カ所に3台配備している。8月にも増車し、車両を増やしていく。
── 利用状況は。
後藤 壱岐では、広告を出していないにもかかわらず1日1件程度はコンスタントに利用者がいる。南房総では有名な写真スポットである原岡桟橋などを見に行くのに使っているようだ。
── 車両の特徴は。
後藤 車体は中国の二輪メーカーにオーダーメードしている。僕らが学生だということは知らない。電池は火災リスクが少ない日本製。自動車免許があれば運転できる。二輪と違い、三輪なので走行も安定している。両手だけで操作でき足は使わないため、高齢者や身障者にも使いやすい。100ボルトのコンセントで充電できて、フル充電で80キロメートルの走行が可能。最高速度は時速50キロだ。
「住民の足」としての活用も
── 資金調達は大変だったか。
石川 取締役の日高将景も含めて、3人で頑張った。まず元手がなかったので日本政策金融公庫の創業融資を利用した。おかげで2020年3月には5台確保することができた。
── 企業名の由来は。
後藤 若者がよく使う言葉に、英語のエモーショナルに由来する「エモい」という言葉がある。感情が揺さぶられた時に使う。それとモビリティーを掛け合わせて「エモビ」という企業名になった。
── 今後の目標は。
後藤 コロナが収まるであろう来夏の観光を念頭に、利用のされ方やトラブルなどのデータを集めている。「観光地の移動はEVトゥクトゥクで」を、定着させていきたい。また、観光シーズン以外には、農作物や魚を運ぶ“住民の足”として活用してもらうことを計画している。自動車のレンタカーに比べ、維持費は格安で車庫証明もいらないから住民も使いやすいはずだ。
石川 タイの首都バンコクなど大気汚染の深刻な都市では、内燃機関のトゥクトゥクがたくさん走行している。EVトゥクトゥクを日本市場で実用化して、世界のモデルになれればエモビの企業価値は大きくなる。
eMoBi(エモビ)(東京都中央区)
事業内容:EVトゥクトゥクのレンタルサービス
本社所在地:東京都中央区
設立:2020年12月
資本金:450万円
メンバー:3人
■人物略歴
●石川達基(いしかわたつき、写真右)
1999年鹿児島市生まれ。2018年ラ・サール高校卒業。同年に東京大学法学部に入学。21歳。
■人物略歴
●後藤詩門(ごとうしもん、写真左)
99年岐阜市生まれ。18年岐阜北高校卒業。同年に慶応義塾大学商学部に入学。21歳。