経済・企業

半導体不足の潮目は2022年の半ばと考える理由=大山聡

半導体材料のウエハー。半導体の不足感は徐々に解消が見込まれる Bloomberg
半導体材料のウエハー。半導体の不足感は徐々に解消が見込まれる Bloomberg

「水増し」需要で供給逼迫 22年半ばには不足感に潮目

 2021年は半導体の需給逼迫(ひっぱく)が表面化し、中でも車載用製品が著しく、自動車メーカー各社が減産を余儀なくされた。同様の状況が家電や産業機器の生産現場にも生じるなど影響は広範囲に及んでいる。社会問題にまで発展したこの状況はいつまで続くのか。結論を先にいえば、22年半ばごろには現在の不足感の潮目が変わる可能性が高いとみている。(世界経済総予測2022)

 図1は世界半導体出荷額を製品別に示したものである。どの製品市場も出荷が増えているが、メモリーとロジック(論理回路)の両市場の伸びが突出していることが分かる。昨今はスマートフォンやパソコンが普及し、サーバーやデータセンターに蓄積される情報・データが常に増加傾向にある。

 これらの電子機器には半導体、とりわけメモリーとロジックが大量に搭載されており、機能向上のためにはこの2種類の半導体の微細化が欠かせない。つまりメモリーとロジックの需要増に対応するためには、工場の生産能力を拡張するだけでなく、最先端の製造装置を導入するための設備投資を行う必要があるのだ。

 図2は、世界における半導体製造装置のウエハー処理装置の出荷動向を示したものだ。ウエハー処理装置を購入するのは、一部の例外を除けば、半導体受託生産を行うファウンドリーと、NAND型フラッシュメモリー(書き換え可能で電源を切ってもデータが残るメモリー)やDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)に大別されるメモリーメーカーに集中している。この実態と昨今の半導体不足には、実は密接な関係がある。

 半導体メーカーには、設計と製造の両方を自社で行う「IDM」(垂直統合型メーカー)と、設計のみの「ファブレス」、製造のみを行う「ファウンドリー」の三つの形態がある。メモリー市場ではIDMが圧倒的に強く、ロジック市場ではファブレスとファウンドリーに分業した企業の方が優勢である。それ以外の製品市場ではIDMが主体だが、積極的に設備投資を行うファウンドリーに生産を委託するIDMが増えており、結果的に設備投資はファウンドリーとメモリーメーカーに集中する傾向が強まっている。

マイコン、ロジックで顕著

 昨今の半導体不足はメモリー市場では発生しておらず、幅広い製品に搭載されるアナログ、ディスクリート(単一目的に使われる単一機能の半導体)、自動車や家電、産業機器などを制御するマイコン、ロジックの各市場で発生している。アナログもディスクリートもIDMが主体の市場だが、自社工場を増強しているIDMはごくわずかで、ファウンドリーへの依存度が徐々に高まっている。

 マイコンは米インテルを除いてほとんど設備投資を行っておらず、やはりファウンドリーに依存している状態だ。ロジックは元来、ファウンドリー依存が中心の市場である。つまり昨今の半導体不足は、主にファウンドリー依存の高い領域で発生しているのである。

 世界経済は20年に新型コロナウイルスの感染爆発によって混乱状態に陥り、半導体業界も例外ではなかった。ロックダウン(都市封鎖)が行われる異例の事態の中、20年前半は巣ごもり需要でパソコンやゲーム機の需要が伸び、スマホ、自動車などの需要は低迷した。しかし後半になってスマホや自動車の需要が回復し、これが半導体市場の動向にも大きな影響を及ぼした。

 半導体市場にとっては、自動車向けよりもスマホ向けの方が需要ははるかに大きいが、スマホ分野は顧客のメーカー数が限られており、搭載部品も明確で市場構造が分かりやすいため、大きな混乱は避けられた。一方の自動車分野は、顧客数が多く搭載部品が多彩で、市場構造が複雑なため、大きな混乱を招いた。急に需要が回復しても、半導体の供給体制をなかなか立て直せなかったのである。

供給拠点は集中の構図

 半導体プロセスの高集積化が進んだことによって、最先端プロセスへの設備投資は技術的にも金額的にもハードルが高くなり、メーカーは淘汰(とうた)された。結果としてメモリー市場では寡占化が進み、ロジックやマイコン市場では設計と製造の分業制が加速した。メモリー以外の半導体は用途が広がる一方なので、メモリー市場のような寡占化は起こりにくい。

 しかし、製造のための設備投資を行うのはファウンドリーに集中しており、この結果、地理的には需要地が世界に拡散する一方で、供給拠点は特定の国・地域に集中する構図になっている。さらには、輸出入港でのコンテナ渋滞などが引き起こされると、世界中に散在する需要地に半導体をタイムリーに届けることが困難になる。

 ファウンドリー各社によれば、どの工場もフル稼働で生産が追いつかず、受注残が22年末分まで積み上がっている企業がほとんどだ。従って、彼らは口をそろえて「半導体不足は22年末まで続く」とコメントしているが、果たしてそうだろうか。

 昨今の半導体ユーザーは、「100個注文しても80個しか納品されないのであれば120個注文しておこう」と、水増しした仮需要を含んで発注する傾向がある。半導体ユーザーから注文を受けるIDMも同様に、委託先のファウンドリーに対して仮需要を含んだ注文を入れるようになる。ファウンドリー各社の受注残には、一定数の仮需要が含まれているはずである。

 20、21年と半導体製造装置市場は大きく成長しており、22年の生産能力は全体的にかなり底上げされている。半導体のサプライチェーンが複雑化しているため、流通上の過不足はなかなか露呈しないが、22年中ごろには仮需要の実態が明らかになる、と筆者は予測している。特にファウンドリー依存度の高いロジック、マイコン、アナログの順に不足感が解消していくのではないだろうか。

(大山聡・グロスバーグ代表)

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