経済・企業 半導体 需要大爆発
半導体不足は最短22年春に解消も、不足が常態する懸念=戸澤正紀
不足解消はいつ? 想定される三つのシナリオ 最短22年春も常態化の懸念=戸澤正紀
半導体不足による混乱が続いている。半導体製品を売買する立場から今後の見通しを聞いた。
(構成=編集部)
半導体の不足が顕在化したのは、2020年末。19年の米中摩擦と20年の新型コロナウイルスの感染拡大で、半導体工場の設備投資が減退し、生産も低下した状況が1年半~2年続いている中で、半導体の需要は上がり続けたため、20年末に反動需要が一気に来たかたちになった。半導体が不足したことで、当社のような半導体商社への受注も増えていった。(半導体 需要大爆発 特集はこちら)
当社への受注状況から、半導体不足は21年6月にいったんピークを打ったとの感触を持っていた。しかし21年末にかけて、当社の受注がなかなか落ちないため、不足のピークはまだ先かもしれないと見ている。半導体不足で減産していた自動車メーカーの動きも二転三転しており、通常生産に戻した後で昨年12月には減産を発表したメーカーも出てきている。
全体的に供給が需要を満たせていない状況が続く中、発言力の強い超大手のユーザーには少しずつ半導体製品が入り始めていると思うが、そのゆがみが出ている。超大手への販売が優先されたことで、普通の大手以下から中小は製品の入手状況が、むしろ悪くなっている場合もある。
まだ混乱は続きそうだが、以下に半導体不足はいつ収束するかの見通しを述べる。
シナリオ1 22年春 二重発注製品が入荷
20年後半から半導体不足が問題視されるようになり、1年以上前から半導体商社は通常よりも余分に製品を発注する「二重発注」を繰り返してきている。納期が五十数週ともいわれており、早期に二重発注した製品が入ってくる時期が、ちょうど22年3~4月。製品が入ってくれば、二重発注した分野の製品の需要は消えるので、不足している領域の半導体の生産が進み、徐々に混乱は収まるという見方がある。
シナリオ2 22年夏 増強ラインが稼働
半導体不足を受けて、20年末から21年初頭にかけ、多くの半導体メーカーが製造ラインの増強を表明した。その大半は最先端製品向けの300ミリ工場だが、不足している成熟プロセス製品の200ミリ工場の投資も一部では行われている。半導体工場は建屋をつくって、製造装置を購入・配置して稼働を始めるまで1年以上要する。早期に投資した工場が稼働するのが22年夏で、そのころには製品が出回り、不足状況は解消されるという見方がある。
シナリオ3 不明 半導体不足が常態化
シナリオ(1)と(2)のタイミングでも半導体不足が解消されないとすると、半導体の需要自体が増大し、不足状態が常態化すると見たほうがいいかもしれない。スマートフォンや自動車など最終製品に搭載される半導体の数は増えている。また、メタバースの到来でクラウドやデータセンター向けに半導体の需要はさらに増大する。さらにSDGs(持続可能な開発目標)の観点から、グリーン投資が進み、電力消費の効率を上げるパワー半導体の需要も増大する。半導体全体の需要が飛躍的に増えることから、半導体は常に不足する状態になるという見方がある。
(戸澤正紀・コアスタッフ社長)