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《EV・日本の大逆襲》EVに懐疑的な日本にアウディが提起した再エネ「地産地消」モデルとは

真庭市で再エネとEVの討論会(左3人目から右に岡山大学の河原伸幸教授、太田昇市長、アウディジャパンのマティアス・シェーパース氏)
真庭市で再エネとEVの討論会(左3人目から右に岡山大学の河原伸幸教授、太田昇市長、アウディジャパンのマティアス・シェーパース氏)

EVと地方創生 バイオマスで再エネ62%「地産地消」の岡山県真庭市

再エネ資源が豊富な地方こそ、EVを生かす余地がある。(EV・日本の大逆襲 特集はこちら)

 独自動車メーカー、アウディの日本法人が4月、ユニークなプレスツアーを実施した。間伐材などを原料とするバイオマス発電で知られる岡山県真庭市をビジネスメディアと訪問。その取り組みを見学・取材するとともに、持続可能な社会について、地元の大学を交えた「産官学」で公開討論を行うという内容だ。

 アウディは昨年8月にグローバルな経営戦略「Vorsprung 2030」を発表、生産・販売車両のEV化を進めている。「エンジン車をニューモデルとして投入するのは25年まで。33年以降は一切、エンジンは作らない予定」(アウディジャパンブランドディレクターのマティアス・シェーパース氏という。

 一方で、日本国内ではEVに対して懐疑的な見方が根強い。特に多いのが「再生エネルギーが普及していない日本でEVを走らせても二酸化炭素(CO2)の削減につながらない」という指摘だ。しかし、それは本当なのか。再エネの取り組みで先進的な自治体を訪問し、その実態を世間に伝えることで、日本社会の議論を喚起したい、というのがアウディの狙いだ。

 真庭市は岡山県の北中部に位置し、面積は828平方キロメートルと東京都23区の1.3倍もある。人口は約4万3000人。面積の8割は森林で農業、林業、製材業が主要産業だ。

 市にある豊富な森林資源を活用し、林業で出る間伐材、製材所で出る端材や木の皮などから、バイオマス燃料を作り、発電している。15年から稼働しているバイオマス発電所は1万キロワット時の電気を供給している。バイオマスに加え、太陽光、風力、水力、地熱の再生可能エネルギーによるエネルギー自給率は20年1月時点で62%に達する。日本全体の再エネ比率は19年度で18%だから、真庭市は実にその3倍強だ。真庭市は市庁舎にEVの急速充電器を設置し、24時間無料で提供している。

広葉樹で半永久サイクル

 真庭市の太田昇市長によると「バイオマス発電はもっと工夫の余地がある」という。具体的には、広葉樹の活用だ。針葉樹は伐採すると植林しなければいけないが、広葉樹は伐採すれば、すぐに芽が出る。江戸時代は30年ごとに広葉樹を伐採し、半永久的なエネルギーサイクルを作っていた。しかし、明治になってから広葉樹は活用されずにきた。針葉樹に比べ伐採しにくく、効率が悪いためだ。「そのあたりをきちんと技術開発すれば、バイオマスは、太陽光に比べてずっと安定的に電力を供給できる(太田市長)。

 市は岡山大学と再エネ開発で連携している。公開討論では太田市長、シェーパース氏と河原伸幸・大学院教授、大学院生4人が再エネとEVの可能性について議論した。バイオマス発電を研究している学生は、「マイクログリッド(地産地消型の小規模電力網)を実現するには、EVの蓄電池が必要」と指摘。EVには単なる移動手段以上の役割があると強調した。火力発電の効率化を研究する学生はバイオマスの課題について質問。太田市長は、「電力の製造原価は石炭火力が1キロワット時当たり12円に対し、真庭のバイオマス発電は20円を超えている。いつまでもFIT(再エネの固定価格買い取り制度)に頼って、消費者に価格を転嫁するのは難しい」と燃焼技術の更なる向上などを求めた。

 北海道・下川町など真庭市以外にも再エネで成功している自治体は少なくない。地方の潜在力に目を向ければ、日本社会がEVを見る目も変わってくるはずだ。

(稲留正英)

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