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教養・歴史書評

在日中国語新聞の150年史を解説・分析=菱田雅晴

 石川啄木とは言わずとも、異郷にあって母国語の響きはいとおしい。特に異国の不慣れな慣習、風俗、文化に戸惑う中、懐かしい母国語でそれらを解説してくれるとあればこれほどありがたいものはない。

 そうしたゆえんだろうか、「在日華字紙」と呼ばれる華僑、華人向けの中国語新聞は、その数、日本全国で50紙以上に上り、東京だけでも大小さまざま30紙はあるという。

 在日華字紙が特に集中しているのが東京・池袋。駅周辺には四川、北京、広州、上海以下、ウイグル料理に至るまでの各種中華レストランはじめ中国スーパー、カラオケ店や風俗店までひしめいている。その店先には、あらゆる立場を掲げる華字紙が、無料配布のフリーペーパーとして山積みされている。

 これら在日華字紙の150年来の歩みを解説、分析するのが、周佳榮著『瀛洲華聲:日本中文報刊一百五十年史』(三聯書店(香港)、2020年)である。「瀛洲(えいしゅう)」とは日本の雅称であるが、著者、周佳榮・香港バプテスト大学教授は大阪外国語大学(現大阪大学)にも学んだ東アジア研究者で『近代日本文化與思想』等多くの日中関係史の著作で知られる。

 同書は清朝末期の赴日留学生、革命青年向けの啓蒙(けいもう)的にして政治色の濃い媒体の創刊から今日の華字紙の再興に至るまでを、香港における『香港日報』等日本の華字メディアの発行とも対比させ丹念に分析している。

 19世紀末から21世紀初めに中国人が日本で発刊した中国語新聞は200種に及ぶともされ、特に清朝末期では「知識を世界に求む」という明治期日本の時代精神に触発され、『新民叢報』等中文報刊が中国革命に与えた影響を著者は特筆している。

 近年では、中華系コミュニティーにあっても、日本語を母語とする2世、3世層が増加しており、日中語併記の華字紙も増えているという。読者層として日本人の中国語学習者も意識されているというが、中国留学生、研修生ほか新華人にとっては住宅、不動産、チケット、求職、結婚あっせん等充実した広告ページが便利な情報ソースとして大きな役割を演じている。

 巻末には日本で創刊された華字紙一覧および活動状況が手際よく収録されており、資料的価値も高い。

(菱田雅晴・法政大学名誉教授)


 この欄は「永江朗の出版業界事情」と隔週で掲載します。

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