北京の町並みの今昔や風物、自然の魅力描く歴史エッセー=加藤徹
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江戸研究の大家・三田村鳶魚(えんぎょ)(1870~1952年)の随筆は面白い。読者は、まるで自分が江戸時代を旅行しているかのように、昔の生活を生き生きと追体験できる。
劉一達(りゅういったつ)著、李濱声(りひんせい)イラスト、日中翻訳学院訳の『悠久の都 北京─中国文化の真髄を知る』(日本僑報社、3960円)は、三田村の著作に似た味わいの歴史エッセーだ。
著者は1954年生まれの北京っ子である。「北京は六つの時代(燕・遼・金・元・明・清)の都だった。私たちからしてみればこれらの時代はまだそれほど遠い昔ではない」。3000年前の燕の時代にはじまる古都・北京は「風景のみならず、社会の風潮、徳行、規則などのソフトパワー」でも「全国で最も優れた地方」で、「北京の気風や規則は中国各地で模倣されている」。
本書は、北京の昔と今の町並みや、季節の風物詩、花や木、昔ながらの下町の人情を、やさしい言葉で縦横無尽に語る。ほのぼのとしたイラストが興を添える。描いたのは、25年生まれの李濱声氏だ。北京の天安門に掲げられている巨大な毛沢東の肖像画を手掛けた大家である。
東京の地下鉄の半蔵門駅や桜田門駅と同様、北京でも、昔の城門の名前は地名や駅名として健在だ。天安門と地安門、宣武門と崇文門、という具合に対になっている。例外は建国門と復興門だ。この二つの門の名は、実は日本軍の北京占領と関係があって……続きは本書…
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週刊エコノミスト
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