鄧小平路線に終止符を打つ習氏3期目 国家主導の経済へ回帰 河津啓介
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5年に1度の中国共産党大会で、習近平総書記(69)が異例の3期目入りを決めた。「68歳定年」の慣例を破り、最高指導部メンバー(党政治局常務委員)を自らの側近で固めた。
従来の集団指導体制を形骸化させる「習1強」の完成を、多くの識者が中国政治の歴史的な転換点と受け止めている。
中国通のケビン・ラッド元豪首相は米誌『フォーリン・アフェアーズ』(11月9日付電子版)への寄稿で、今回の党大会を「習氏のワンマンショー」と表現し、「鄧小平時代に終止符を打った」と指摘した。
ラッド氏は「中国は、数十年にわたる政治、経済、外交政策の現実主義と協調主義から脱却しつつある」と分析した。イデオロギーを重視する習氏は、市場よりも国家が主導する経済へ回帰させ、対外政策では「国家の安全」を優先し、より強気の姿勢になるとの懸念を示した。
米クレアモント・マッケナ大教授のミンシン・ペイ氏は、中国問題をテーマとするポッドキャスト「不明白」(11月12日付配信)で、「中国は世界情勢への見方を根本から変えた。鄧小平は、世界で大規模戦争は起こりえず、発展の機会だと捉えていた。しかし、今回の党大会での認識は、世界は危険で波乱に満ちており、そのための備えが必要だというものだ」と解説した。
一方で、ミン氏は「それでも経済が悪化すれば、国家の安全は台無しになる。世界的な影響力も低下してしまう。習氏がいくら『安全だ、安全だ』と強調しても、最終的には、経済発展との間で妥協点を探らざるを得ないのではないか」とも述べた。
「イデオロギー」優先に
習氏のワンマン体制は、高度成長期が終わった中国経済をどう導くのか。外国では、悲観論が広が…
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週刊エコノミスト
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