選択と集中で25年度以降に再成長を――大幸利充・コニカミノルタ社長兼CEO
コニカミノルタ社長兼CEO 大幸利充
たいこう・としみつ
1962年生まれ。福井県立藤島高校卒業。京都大学法学部卒業。86年4月ミノルタカメラ(現コニカミノルタ)入社。2015年4月執行役、18年4月常務執行役、20年4月専務執行役を経て22年4月から現職。福井県出身。61歳。
Interviewer 岩崎誠(本誌編集長)
── 今年度(2025年3月期)業績は売上高が前年並み、事業貢献利益が54%増、営業利益50%減、当期利益はゼロの予想です。今年度はどのような位置付けですか。
大幸 当社は現在、事業の選択と集中を進めており、最も重視しているのは事業貢献利益です。24年3月期実績の260億円を400億円に伸ばす計画です。
その一方で、営業利益が260億円から130億円に半減するのは、グローバルでの人員を最適化するために一時的な費用が発生すること、不採算の事業をやめるあるいは売却することに伴い損失も出るので、事業貢献利益から営業利益の段階で270億円減額になります。その結果、支払い金利や税金の関連で当期利益はゼロの見通しにしました。26年3月期以降に稼ぐ体質にするための施策を打った結果、このような見通しになりましあた。
── 24年3月期は当期利益が5年ぶりに黒字になりました。
大幸 (医療関連など)赤字事業を終息する方針は23年3月期の後半に固めて、実行段階に入りました。投資を控え、赤字事業の赤字圧縮が進んだことが大きな要因です。オフィス向け複合機などのデジタルワークプレイスは、新しい働き方が定着する中で、23年3月期から収益は好転していることも(黒字化に)寄与しています。
── 今年度、部門別の業績予想で強調したい点とは。
大幸 事業セグメントは、「デジタルワークプレイス」、「プロフェッショナルプリント」(商業印刷、産業印刷など)、「ヘルスケア」(医療機器、遺伝子検査など ※編集注:6月事業区分を変更)、「インダストリー」(ディスプレー用材料、センシング機器など)に大別されます。25年3月期は、事業貢献利益が前年度から140億円増額しますが、もっとも大きいのはインダストリーです。ヘルスケアは遺伝子検査事業が赤字であり、部門全体の損益予想も赤字ですが、過去に買収した創薬支援企業の一つを前年度に売却済みであり、前年比で損益改善を見込んでいます。
── 売り上げ規模の大きいデジタルワークプレイス、プロフェッショナルプリントの状況は。
大幸 コロナ前と比べると、オフィスでのプリントは2割近く下がったのですが、新しい働き方が定着していまでは緩やかな出力の減少になっています。コロナ禍で経験したような2割も減るということは起こらないと考えており、オフィス(デジタルワークプレイス)の収益は横ばいとみています。
プロフェッショナルプリントは、コロナ禍が終息して需要に対して即応性の高いデジタル印刷の良さが再認識されています。イベントに関連した印刷のニーズがある場合に、実際にそのイベントが開催されるかどうか直前まで分からない時など、需要に応じて必要な部数だけプリントできるデジタル印刷の価値が再認識され、そこに大きな伸び代があります。
富士フィルムとの協業の狙いは
── 今年4月に、富士フイルムビジネスイノベーションと複合機、プリンター分野で連携の協議を始めると発表しました。その狙い、収益への貢献の期待はいかがでしょうか。
大幸 今後プリントが減っていくことは意識しており、投資をいかに効率よく行うか、業界各社が取り組んできました。それをさらに前に進めるために、機能や性能で差別化が困難な事業領域は共通化しようという発想です。富士フイルムと考え方を共有する中で、部品や原材料で共同の調達を行って、即効性ある成果を出すことを目指すのが狙いです。
7~9月期のどこかで調達の合弁会社を設立する議論をしている最中です(編集注:7月に設立発表)。現時点で、どの程度の金額の貢献が期待できるとは言えない状況ですが、いずれそうしたことも公表しようと考えています。
── 成長期待のインダストリー事業ですが、薄型ディスプレーに使われる機能材料でテレビやスマートフォン(スマホ)に代わる需要開拓の取り組みはどうですか。
大幸 テレビは中小型から大型化しており、ディスプレーに必要な当社のフィルムの需要拡大が期待できます。スマホは買い替えサイクルが長期化しています。一方で、ディスプレーが折り曲げ可能なフォルダブルタイプや有機ELに移行していく中で、求められるフィルムのタイプが変わってきます。したがって需要拡大の余地はまだあると考えています。
── ペーパーレス化の見通しはどうみていますか。
大幸 中期経営計画(24年3月~26年3月期)で、オフィスでは年率4%ずつプリント出力が下がる想定ですが、この1年をみると実際は2%弱と緩やかです。それはグローバルにならしただけで、伸びている地域もあります。この先3、4年でディスラプター(ビジネスモデルの破壊者)になるテクノロジーが来るとはみていません。
(構成=浜田健太郎・編集部)
横顔
Q これまでビジネス人生で最もピンチだったことは
A ミノルタ時代に買収した米国企業の欧州子会社に出向中、方針の違いから欧州子会社社長からクビと言われ、その社長をクビにしてくれと米親会社に反論しました。
Q 「好きな本」は
A 渡辺淳一の本が好きです。
Q 休日の過ごし方
A 公私でゴルフは多いです。あとはサッカー観戦。横浜F・マリノスのファンです。アジア王者決定戦(5月)でUAEアブダビのアル・アインまで応援に行きました。
事業内容:事務機器、商業印刷、ヘルスケア、産業用各種部材・機器などの製造販売
本社所在地:東京都千代田区
設立:1936年12月
資本金:375億1900万円
従業員数:4万15人(2024年3月31日時点、連結)
業績(24年3月期、連結)
売上高:1兆1599億円
営業利益:260億円
週刊エコノミスト2024年8月27日・9月3日合併号掲載
編集長インタビュー 大幸利充 コニカミノルタ社長兼CEO