東京五輪で経済成長なんかするわけがない=小林よしのり(漫画家)
2本目の東京タワー(スカイツリー)を建て、2回目の東京五輪をやったら次は2回目の大阪万博で、その次は2回目の札幌五輪を目指している。
高度経済成長の「成功体験」を忘れられない年寄りたちが「夢よもう一度」とばかりに必死で祭りをリピートしているのだが、本末転倒も甚だしい。
高度経済成長期だったから祭りが成功したのであって、祭りをやったから高度経済成長期がやって来たのではない。
高度経済成長とは、復興経済である。戦争で全てを失ったところからの出発だったから急速に経済成長したのであり、その経済構造は世界的にも第1次石油ショックが起こった1973年で終了している。
あの頃の祭りをいくら繰り返しても経済成長などするわけがなく、発想が幼稚すぎる。
70年大阪万博には高校生のとき行ったが、わしの記憶に残る、そして現存する成果は岡本太郎の太陽の塔だけだ。しかも太陽の塔は、実は「反万博」の象徴だったのだ。
岡本太郎は70年万博のテーマ「人類の進歩と調和」に真っ向から反対し、「人類は進歩なんかしていない」「まず闘わなければ調和は生まれない」と唱え、「進歩と調和」とは正反対のものとして、会場の大屋根を突き破る太陽の塔をぶち建てたのだ。
大阪府の松井一郎知事は「大阪万博で10歳若返る」をキーワードに、iPS細胞による再生医療などで人が若返り、長生きする未来を万博で示したいと言う。
経済成長すれば幸福、長生きできれば未来はバラ色とはあまりにも単純すぎる発想で、つくづく「人間は進歩しない」という事実を実感させられる。
手塚治虫の『火の鳥』を読んだわしから見れば、これはあまりにも幼稚で、「退歩」でしかない。
(小林よしのり・漫画家)