移民がもたらす「リベラルの死」=小林よしのり
日本もついに移民受け入れにかじを切った。グローバリズムの流れの中で自民党は経済界の求めに応じたが、野党は決して「移民反対」とは言いはしない。むしろ移民の人権を考慮するばかりでリベラルの偽善を全開にしていた。「移民反対」を唱えれば、偏狭なナショナリズムで排外主義だと批判されることを、リベラル勢力は恐れる。
ダグラス・マレー著『西洋の自死』を読んだが、移民は自分たちとは何のつながりもない社会の中で、固有の文化や習慣を保ち続ける傾向があるようだ。「郷に入っては郷に従え」というのが日本人の常識だということを彼らは知らない。
EU(欧州連合)各国は移民を同化させたいのか、多文化主義でよしとするのか、決定できない。リベラルが彼らの信条だからだ。そもそもナショナリズムを否定してEUを作ったのだから、移民反対も移民同化もあしきナショナリズムであり、排外主義だと批判される。
移民の出生率は移民受け入れ国の少子化を圧倒する。いずれ受け入れ国は移民に乗っ取られることになる。
リベラルな価値を信じる欧州人を前に、進化は虚偽であり、女性の権利も、同性愛者の権利も、宗教的な権利も、少数派の権利も根本的に誤りであると信じている人々が急増しているのである。
移民によるテロが発生する度に、警戒されるのは人々のナショナリズムの高揚であり、排外主義である。テロの被害者はたちまち忘れ去られて、何事もなかったように日常に復帰しなければならない。
侵略国だった欧州人の過去に起因する罪悪感が、移民への寛容さを下支えしている。日本で言えば、自虐史観がナショナリズムの足を引っ張るようなものだ。
イギリスは一刻も早くEUから離脱するべきだろう。欧州リベラリズムは死に、移民によって文明が反転し始める。野蛮への道をひた走っている。
(小林よしのり・漫画家)