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「レイプ被害者の側にも非がある」かのような山口敬之氏の「暴言」=小林よしのり(漫画家)

撮影 中村琢磨
撮影 中村琢磨

 ジャーナリストの伊藤詩織さんが元TBS記者、山口敬之氏を訴えていた民事裁判で、東京地裁は山口氏が伊藤さんに対し「合意のないまま性行為に及んだ」と認めて330万円の損害賠償を命じる判決を下し、山口氏の反訴を棄却。伊藤さんの全面勝訴となった。山口氏は地裁判決を不服として控訴した。

 あきれたのは山口氏が地裁判決後の記者会見で、性暴力被害者から聞いた話として、「本当に性被害にあった人は、記者会見の場で笑ったり、上を見たり、テレビに出演して、あのような表情をすることは絶対ない」と言ったことだ。本当の性暴力被害者は笑うこともできず、泣き寝入りするものだと言いたいらしいが、耳を疑うような暴言である。

 これは事件の当事者はもちろん、第三者でも決して言ってはいけない言葉であり、それを平気で口にするところに、性暴力被害者に対する偏見にまみれた本性が如実に表れている。自分で自分の首を絞めているようなものだ。

 山口氏を擁護する連中は、伊藤さんの記者会見の際のシャツの首元が開きすぎとか、事件当時の下着が派手だったとか、ピアノバーでバイトしていたとかいうことを強調するが、だから何だというのか? そういう女性はたとえレイプされても仕方ない、性暴力被害なんか訴えてはいけないとでも言いたいのか? 根本的に常識が狂っている。

 ジョディ・フォスター主演の映画「告発の行方」は、「レイプ被害者の側にも非がある」という偏見を真正面から打ち破った傑作である。もう32年も前の作品だ。それぐらい見たらどうだろう。

 ちなみにわしは山口氏を「レイプ魔」と書いたことで、名誉毀損(きそん)で訴えられている。東京地裁が山口氏の不法行為を事実認定しても、わしの裁判はまだ続く。やれやれだ。

(小林よしのり・漫画家)


 本欄は、池谷裕二(脳研究者)、片山杜秀(評論家)、小林よしのり(漫画家)、古賀茂明(元経済産業省官僚)の4氏が交代で執筆します。

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