ハーフでも外国出身でも「愛国心」があるなら日本国民だ=小林よしのり(漫画家)
わしとの共著『天皇論「日米激突」』(小学館新書)を出した米国の近現代天皇制研究の第一人者、ケネス・ルオフ氏を、麗澤大学教授の八木秀次氏が「ケネス・ルオフの本音はハーフの天皇誕生か」と批判している(『WiLL』8月号)。
八木氏には「純血日本人」がいるという幻想があるようだが、そもそも古代から日本には朝鮮・中国から渡来した人々がおり、九州には熊襲(くまそ)や隼人(はやと)、関東以北には蝦夷(えぞ)と呼ばれる人たちがいた。それらが混交を重ねてきたのだから、純血なんかあるわけがない。
しかも今では、ハーフのタレントやスポーツ選手の話題が出ない日はないほどだ。片親が外国人で見た目が黒人や白人でも、日本語を話し日本国籍を持つ人も多い。ルーツより帰属意識を問うべきで、日本への愛国心があるなら日本国民の成員でいいではないか。
天皇は全国民の象徴である。それなら将来的にハーフの天皇が登場しても全くおかしくない。むしろ、ハーフを排除したら全国民の象徴になっていないことになる。同じ理由で、国民の半分は女性なのに、女性が天皇になれない現在の制度は絶対におかしいとも付言しておく。
ラグビー・ワールドカップの日本代表チームも、いろんな国にルーツを持つ日本人たちが素晴らしい活躍を見せてくれた。ところがこれに対して「国籍や国境を超えているからいい」と言い出す左派がいる。
だがラグビーもまた、国家を否定したい左派の願望とは正反対のものだ。ラグビーは他国籍の選手も代表になれる規定があるが、他国籍の選手も日本への愛国心を持ち、自ら日本を選んだのだから、ナショナリズム(国民主義)を基本としていると考える。
右派も左派も、自分の幻想や願望から的外れなことばかり言っている。
(小林よしのり・漫画家)
本欄は、池谷裕二(脳研究者)、片山杜秀(評論家)、小林よしのり(漫画家)、古賀茂明(元経済産業省官僚)の4氏が交代で執筆します。