週刊エコノミスト Online闘論席

新型コロナ禍を招いたのは「グローバリズム」だ=小林よしのり(漫画家)

	企業改革経営者及び新事業挑戦者表彰式で、竹中平蔵金融・経済財政担当相(左)と話をする日産自動車のカルロス・ゴーン社長=首相官邸で2002年(平成14年)10月16日、草刈郁夫撮影
企業改革経営者及び新事業挑戦者表彰式で、竹中平蔵金融・経済財政担当相(左)と話をする日産自動車のカルロス・ゴーン社長=首相官邸で2002年(平成14年)10月16日、草刈郁夫撮影

 わしはかれこれ20年近くグローバリズムに反対してきた。グローバリズムは国境の壁を限りなく低くして、ヒト・モノ・カネ・サービスを世界中自由に行き来させるものである以上、当然ウイルスだって自由に国境を越えてくる。その危険性もずっと警告してきたが、誰も耳を貸さなかった。

 それが今や新型コロナウイルスの脅威で、各国が国境の壁を限りなく高くして鎖国状態である。笑えるのは、欧州連合(EU)までが国境を封鎖し始めたことだ。そしてEUに強いられた緊縮財政策で医療機関を減らしてきたイタリアは、医療崩壊を起こしている。

 新型コロナにはグローバルな対処法など存在せず、まさに国柄や国民性に合わせた、国家ごとの対策を採るしかなくなっている。

 日本は歴史的に衛生観念が強い国で、幕末に来日した欧米人が口々に「世界一清潔な国」と感嘆したほどだ。あいさつにしてもキスやハグ、ビズといった濃厚接触でなく、他人と距離をとるお辞儀の文化を持つ。日本の国民性からすれば手洗いさえ徹底させれば、持病のある高齢者以外はそれほど恐れなくていい。

 新型コロナは指定感染症2類相当で、医療崩壊をしなければ致死率は1%前後で収まるという。だが将来はエボラ出血熱のように、致死率が5%、10%を超える1類感染症が入ってくるかもしれない。グローバリストはその危険性を放置したまま、喉元過ぎればグローバリズムに戻せと主張するつもりだろうか?

 わしは何も鎖国せよと言っているのではない。各国の国境と文化と安全保障を意識したインターナショナリズムにかじを切るべしと言っているのだ。新型コロナを教訓として、世界をそんな方向に変えていく外交ができないものだろうか。

(小林よしのり・漫画家)

インタビュー

週刊エコノミスト最新号のご案内

週刊エコノミスト最新号

4月30日・5月7日合併号

崖っぷち中国14 今年は3%成長も。コロナ失政と産業高度化に失敗した習近平■柯隆17 米中スマホ競争 アップル販売24%減 ファーウェイがシェア逆転■高口康太18 習近平体制 「経済司令塔」不在の危うさ 側近は忖度と忠誠合戦に終始■斎藤尚登20 国潮熱 コスメやスマホの国産品販売増 排外主義を強め「 [目次を見る]

デジタル紙面ビューアーで読む

おすすめ情報

編集部からのおすすめ

最新の注目記事