新型コロナ対策 アンジェスがワクチン開発へ 半年後の臨床試験入り目指す=加藤結花
大阪大学発バイオベンチャーのアンジェスと大阪大学は3月5日、東京都内で記者会見を開き、新型コロナウイルスの感染を予防する「DNAワクチン」を共同開発すると発表した。ワクチンの投与でウイルスに感染しにくくなるほか、重症化を抑えるといった効果が期待できるという。タカラバイオが製造を担当し、早ければ半年後に臨床試験入りを目指す。
DNAワクチンは、ウイルスを培養して製造する一般的なワクチンとは異なり、ウイルスのDNA(デオキシリボ核酸)情報を使用する。一般的な製造方法では5~8カ月かかるが、ウイルス培養の必要がないDNAワクチンは6~8週間まで製造期間を短縮できるという。アンジェス創業者の森下竜一・大阪大学大学院教授(臨床遺伝子治療学)は「極めて短期間で供給できるDNAワクチンは、今回のような緊急事態に適している」と述べた。
森下教授はまた、ワクチンの有効性について「3、4回投与すると8~9割の人には抗体ができると考えられる」と説明。安全性については、10年以上前から12種類のDNAワクチン臨床試験で1400人以上に投与しており、懸念はないという。
アイロム、武田も
東証マザーズ上場のアンジェス株価は発表を受け、6日まで2日連続のストップ高となるなど、市場の期待は高まっている。ただ、臨床試験は通常であれば数年程度かかるため、たとえワクチンの効果が認められたとしても市販化に至る時期は読めない。アンジェスは政府関係者に対し、承認手続きの簡素化や開発・製造に対する助成金交付などを働きかけているという。
国内製薬メーカーは相次ぎ、ワクチンや治療薬の開発着手を表明している。臨床試験支援事業のアイロムグループが2月6日、中国上海市にある上海公衆衛生臨床センターと新型コロナワクチンを共同開発することで合意したほか、武田薬品工業は3月4日、新型コロナウイルス感染症治療薬の開発を始めると発表。実用化には最短9カ月かかるという。武田は、既存の治療薬の中から新型コロナウイルス感染症の患者に対して有効なものを探す調査も進めている。
新型コロナウイルスに対していち早く有効なワクチンや治療薬を開発できれば、その意義はあまりに大きい。
(加藤結花・編集部)