泣きっ面にコロナ?!「5Gサービス開始」が期待に反して残念な結果に=小山安博
携帯電話の次世代通信規格「5G」が、3月下旬からスタートした。高速大容量・低遅延・多数接続といった特徴で今後が期待される5Gだが、サービスを開始した3大キャリアはまだ手探りの状態だ。
5Gは、これまで以上の超高速通信が可能になるだけでなく、反応が速くなるので、遠隔地から重機の操作をしたり手術をしたりといったことが実用的になる。多数接続によってあらゆるものがネットにつながるIoT(モノのインターネット)の普及にも寄与する。リアルタイムで多人数とつながるので、エンターテインメント業界やゲーム業界でも大きく期待されている。加えて各キャリアは企業とも連携して法人向けに5Gの利用拡大を進める戦略を示している。ただし、こうした期待に対して現状の5Gはまだ発展途上だ。
最大の問題はエリアの狭さ。NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクともに、エリアは東京・名古屋・大阪などのごく一部という「点」でしかなく、5Gを利用できる場所がほとんどない。ソフトバンクは点よりもやや広いが、それでも限定的。ドコモやKDDIにいたっては「店舗内」のように極めて限定されたスポットでしか使えない。例えばドコモは2021年度末までに基地局を2万局まで広げる計画で、その頃になってようやく「普通に使える」というレベルになるだろう。
5Gにはエリア設計の難しさがある。5Gで使われる周波数帯は4G LTEに比べて遠くまで飛びづらく、屋内への浸透も少ないため、エリアを広げづらい。衛星電波との干渉にも配慮が必要など、課題も多い。4Gの電波を5Gで使う技術も今後導入されるが、速度などで5Gの特徴が出にくいという問題もある。また、現在は4Gと5Gを併用しているが、5Gのみで真価を発揮する本当の5G時代は当面先となる。
諸外国では19年に開始した国も多い。日本は1年遅れとなったにもかかわらず、こうしたエリア設計の難しさなどに足を引っ張られている状況だ。すでに多くの5Gスマートフォンが海外では登場しているが、日本はサービス開始と同時に発売できた端末も少なく、様子見と手探り感が拭えない。
海外では5G普及に端末補助金を出す施策もあるが、日本では過剰な補助金が法改正で禁じられている。現状では5Gスマホの必要性が薄く、利用者への魅力が足りない。現状では、「プレサービス」程度の展開と言えるだろう。
工場向けに先行利用も
それに対して、工場内といった一部エリアだけを5Gエリアとして、内部の通信を高速大容量・低遅延・多数接続化する「ローカル5G」が進められている。現場の高度化・効率化などで有望視されており、そうした仕組みが先行する可能性はある。
それでも、5Gエリアであれば4Gよりも高速通信が可能で、各社とも無制限またはそれに近いデータ利用を可能にしているため、5Gのメリットは今でも享受できる。各社ともエリア拡大は当初より2年程度前倒しすることを目指しており、エリアが十分に広がったときにようやく本格的な5Gの時代になるだろう。
■小山安博・フリーライター
(本誌〈5Gサービス開始も手探り感は拭えず=小山安博〉)