約3000人の元囚人が「ホームレス化」したNY地下鉄の修羅場=冷泉彰彦
ニューヨークではホームレスの増加が問題となっている。原因は新型コロナウイルスの感染拡大を受けライカーズ刑務所から釈放された服役囚がホームレス化したことにある。約3000人のホームレスがニューヨークの地下鉄構内にとどまっているという。
ホームレスが地下鉄に居座ることについて、人権派を自任するデブラシオ市長は黙認の構えだったが、同州のクオモ知事が「地下鉄の衛生状況が悪化すると、コロナ対策にもマイナス」と判断。知事の要請で、週末の深夜に地下鉄の運転休止を行い、全車両の消毒を実施することとした。
デブラシオ市長は5月13日に会見を開き、警察を動員して3000人以上を確保し、そのうち約1600人の同意を得て保護施設に収容すると発表した。しかし、その後、実際に収容に同意したのは100人のみで、残りのホームレスは再び路上もしくは地下鉄に戻ってしまったことが明らかになった。
背景には、ホームレスの間にある行政に対する不信感や、コロナ対策で釈放された服役囚が保護により刑務所に戻されるのを恐れたことなどが考えられる。ホームレス対策は、市政にとって長期的な課題となりそうだ。
(冷泉彰彦・在米作家)
(本誌初出 ニューヨーク 地下鉄で元服役囚ホームレス化=冷泉彰彦 2020/6/9)