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日産が構造改革 国内拠点整理なし 収益改善に疑問符=遠藤功治

バルセロナ工場閉鎖には厳しい抗議 (Bloomberg)
バルセロナ工場閉鎖には厳しい抗議 (Bloomberg)

 2020年3月期に6712億円の連結最終赤字に陥った日産自動車は、3年後の23年度をメドとした構造改革計画を発表した。カルロス・ゴーン元会長が打ち出した従来の事業規模拡大による成長戦略を取り下げ、台数ではなく、より収益性に重きを置いた収益改善策である。しかし、計画の定量目標は、不完全かつ即効性に乏しく、効果には“モヤモヤ感”が残る。

 計画では、グローバル生産能力を現在の720万台から削減し540万台としている。しかし、実際には600万台の設備を維持しつつ、90%稼働なら540万台、将来市場が回復すれば600万台まで増産対応が可能だとしている。

 自動車会社が手持ちの全工場を常時100%稼働することなど不可能だ。600万台の能力を90%程度で稼働すると想定して540万台という数値を公表したのであろうが、固定資産として日産が有する生産能力は「540万台」という公表値ではなく、「600万台」なのだ。

 これに対して、今期の同社の世界販売台数は年間400万台を割り込む可能性がある。20年3月期実績は493万台だが、トヨタ自動車が今期の販売台数を前年度比2割減程度と見込んでいるのと同様に、日産も同程度の減少幅と仮定するならば、今期の販売台数は390万台程度という数字となる。すなわち、約100万台の更なる減産を意味する。これは売上高で3兆円程度の減、営業利益では1兆円に近い赤字になる可能性を示す。

利益出ない稼働率

 販売390万台に対して生産能力600万台だと単純計算で稼働率は65%。自動車工場稼働率の損益分岐点はおおむね75~80%で、利益が出る水準ではない。市場規模が新型コロナウイルス前に戻るのには、少なくとも3~4年かかると言われる。75%未満の稼働率が3~4年続けば、企業の存続にも赤信号がともる。

 計画では固定費3000億円を削減、スペイン・バルセロナ工場やインドネシア工場の閉鎖を明記し、ダットサンブランドの廃止、メキシコや英国などの生産能力の削減や、2万人程度の人員削減も視野に入る。しかし、固定費がかかる割に稼働率の低い国内の工場閉鎖には言及していない。

 国内には、栃木、追浜(神奈川県)の2工場、日産車体湘南(同)、日産自動車九州(福岡県)の4拠点があるが、九州以外の3拠点は、コロナ前から稼働率は長らく低迷している。

 ゴーン元会長が村山工場(東京都)などの国内生産能力に大ナタを振るったのと同様、今回も工場閉鎖を含む国内拠点の統廃合が必要なのではないだろうか。

(遠藤功治・SBI証券企業調査部長)

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