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国際・政治 20200707更新【週刊エコノミストOnline】

アメリカのネットフリックスで「深夜食堂」「孤独のグルメ」が人気の理由=小林知代

豊富な番組に目移り(Bloomberg)
豊富な番組に目移り(Bloomberg)

 新型コロナウイルス感染拡大による外出自粛のため、友人や遠く離れた家族・親戚とはもっぱら、ビデオ会議でコミュニケーションを取っている。すっかり会話の定番となったのが「ネットフリックスで今、何見ているの」だ。おしゃべりの中から、耳寄りの番組情報を得られるのだ。

 今や、自宅でテレビを見るのは、米国人の大きな楽しみである。波に乗ったのは、地上波のABCやCBSではなく、動画配信サービス事業者のネットフリックスである。時価総額ではウォルト・ディズニー・カンパニーを抜いたと言われる娯楽業界の王者のサービスを、アマゾンプライム、フールー、アップルTVが必死に追い上げる。

「巣ごもり需要」を追い風に、ネットフリックスは有料会員を増やし、最高益を更新している。今や190カ国でサービスを展開し、有料会員は2億人に迫る。ただしこれは一時的な現象であり、自宅待機が終われば減速するという声もある。しかし、ポストコロナ時代においても、多くの人は映画館には近寄らず、自宅での動画配信サービス利用を選び、人気は不動という意見もある。

一斉視聴パーティーも

 コロナ以前からネットフリックスは着実に社会に浸透してきた。「24x7」(トゥエンティーフォーバイセブン、1日24時間・1週間のうち7日間)の、いつでもどこでもコマーシャル無しに、好きな番組を次から次へ見られるため、1回エピソードを見始めると、のめり込んでしまい、夜が明けるまでついつい「一気見」してしまうという危険性もはらんでいる。最近では皆で同じ番組を一斉に見る「ネットフリックスパーティー」もはやっている。画面の右側にチャットのコーナーがあり、動画を見ながら、わいわいと視聴者がコメントを書き込む。

 ネットフリックスは、社会問題に根差したコンテンツを扱うことでも有名だ。性的少数者、薬物乱用、性的暴力など、従来のテレビでは描きづらかった「尖(とが)った」問題を扱う作品を自社制作・配信していることも人気の要因となっている。英語以外の言語による番組も配信しようと、字幕スーパー付きで世界中の番組を配信している。ネットフリックスやアマゾンプライムのおかげで、米国に在住するわれわれも、日本の番組を楽しめる。日系人のみならず、アジア系を中心に米国人の間でも日本の番組の人気は根強い。

 米国では「日本と言えばアニメ」という観念が強く、「ナルト」や「ワンピース」、宮崎駿監督のジブリシリーズも人気である。最近「ルパン三世」も堪能した。

 テレビ番組もある。「ミッドナイト・ダイナー:東京ストーリーズ」との名義で放映されている「深夜食堂」や、「ソリタリー・グルメ(日本名・孤独のグルメ)」や「サムライグルメ(同・野武士のグルメ)」など日本の食を題材にしている番組が静かにヒットしている。

 日本をテーマにした番組もある。BBCが制作し、ネットフリックスが国際放映した「Giri/Haji(義理と恥)」は刑事物語。筆者も近所の米国人に教えてもらった番組で、高い評価を得ている。巣ごもりによる動画配信需要は、日本のコンテンツを広めるきっかけともなっているようだ。

(小林知代・ワシントンコア代表)

(本誌初出 「深夜食堂」も人気上昇 外出自粛で根付く動画配信=小林知代 2020・7・7)

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