「観光庁→経産省→国土交通省」非難ごうごうのGoToキャンペーンをめぐる「中央省庁のババ抜き合戦」
新型コロナウイルス対策として観光業を支援する「GoToトラベル」キャンペーンが、野党や自治体の猛反発を受けて迷走している。政府は感染者拡大が収まらない東京都をいったん「除外する」としたが、批判が相次いだことから、当初「補償しない」としていた“東京外し”で生じる旅行のキャンセル料を「補償する」と方針転換した。安倍晋三政権にとっては「10万円の特別定額給付金」に続き、またも朝令暮改となった。
プラン自体は決して悪いものではなかったが、“最善策”かどうかについては懐疑的な意見が続出。第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストは6月24日のリポートで、旅行分野においては「最大55%の市場規模増加率が期待できる」との見通しを示していた。しかし度重なる政府の方針転換を受けて「英国の付加価値税減税策のように、観光や飲食業への消費減税など、効果的な施策は他にもある」と指摘する。
ニッセイ基礎研究所の佐久間誠准主任研究員は「首都圏内は通勤などで日常的に往来している。同じ経済圏なら感染リスクは限定的。都内間の旅行、観光に限定した宿泊代は支援対象にするなど、やり方はあったはず」と話す。
東京除外や若者・高齢者の団体旅行自粛などの制限が付いたことで、旅行会社にはキャンセルが相次いでおり、効果が危ぶまれる。
大和総研エコノミストの鈴木雄大郎氏は「地域の感染状況や観光業界の実情に応じて、四半期ごとに継続的に予算措置を講じるなど、もっと柔軟な仕組みにするべきだった」と説明する。深刻な打撃を受ける観光産業への支援を本気で考えているなら「政府は制度設計の段階でもっと工夫が必要」と問題提起する。
「経産」の横暴?
金沢市などの観光スポットを擁する石川県旅行業協会は、県の観光支援策「県民限定宿泊割」(県民割)の事務局を務める。同協会幹部は「われわれ地場の旅行会社は、地元を知り尽くした魅力ある観光プランを提案できる。国は大手旅行会社だけでなく、地域の旅行会社にも注目してほしい」と訴える。
そもそも「GoTo」は出だしから、おかしな動きだった。ある国会関係者は「『GoTo』はもともと観光庁が検討していたものを、経済産業省が観光庁から取り上げて、景気対策の目玉に据えた。しかし、持続化給付金の事務委託費問題などで批判を浴びると、急きょ国土交通省に戻して『後はやってください』と。批判の矢面に立った国交省にすれば、たまったものじゃないだろう」と話す。
(和田肇・編集部)
(吉脇丈志・編集部)
(本誌初出 GoToキャンペーン 「東京外し」で迷走 裏で省庁が押し付け合い=和田肇/吉脇丈志 20200804)