30年間で投資額の約3・3倍に! 金に投資するなら「長期分散投資」が絶対的におすすめである理由
金への投資は株式や債券のように無価値になる心配はない半面、金利や配当が付かないという特徴がある。株式や債券への投資では、金利や配当を再投資することで複利効果が期待できるが、金投資ではそうした効果も見込めない。金価格の推移を見れば10年単位で大きく変動しており、高値で買って売り時を逃せば含み損を長期にわたって抱えてしまいかねない。投資するスタンスによって投資手法も使い分けたい。
若年層や子育て世代など資産形成世代が金に投資する場合には、積み立てを活用した長期分散投資が適している。図は、過去30年の円建て金価格(月中平均価格)の推移と、この間、毎月1万円ずつ金を積み立て購入した場合の評価額を表したものだ(手数料などは考慮していない)。
注目すべきは、1990年から2006年にかけての金価格と評価額の推移だ。仮に、90年8月にまとまった金額を投資した場合、2005年12月まで含み損を抱え続けることになってしまう。
だが、同じ期間に金を積み立てた場合には、05年12月には1411・864グラムの金を保有し、評価額は277万7136円にもなる。この間、毎月1万円ずつタンス預金した場合の総額は185万円。金を積み立てたほうが約92万円プラスになったことになる。
なぜ、そうなるのか。積み立て投資では、毎月一定金額ずつ金を購入するので、金価格が高いときは少なく、安いときは多く購入でき、平均購入単価を平準化できるメリットがある。そのため、価格変動に一喜一憂することなく、時間を味方につけた投資ができるのだ。
金を積み立てる方法には、貴金属商や金属メーカー、証券会社が扱う金現物を積み立てる「純金積立」のほか、証券会社が扱う金価格に連動する投資成果を目指す投資信託の積み立てがある。前者は月々1000円や3000円、後者は月々100円など少額から始められ、いったん手続きをすれば、毎月口座から投資資金を引き落として金や投資信託を買い付けてくれる。純金積立の場合には、積み立てた金を換金するだけでなく、金現物やジュエリーなどと交換できる会社もある。
積み立て投資を30年間続けた結果は、総投資額360万円に対して、評価額は3・3倍超の1193万435円。90年8月にまとまった金額を投じた場合でも、評価額は同じ程度に上昇しているが、99~00年には購入額の半値まで下がった時期もあり、含み損を抱えた期間は気が気でなかったはずだ。
機動的なETF
中には、金価格の波を捉えて短期で利益を得たい人もいるだろう。その場合は、金価格との連動を目指して運用されるETF(上場投資信託)を活用したい。株式市場に上場し、株式と同じように売買できる商品なので、取引時間中ならばいつでも機動的に売買できる。
投資に慣れた人の場合には、金CFDを活用する方法もある。CFDはContract For Differenceの略で、「差金決済取引」と呼ばれる。証拠金を担保として差し入れることで、証拠金の数倍~数十倍の金額の取引ができるハイリスクな商品だ。自分の読みが当たれば大きな利益を得られる一方、外れた場合は大きな損失を被る。なお、買いだけでなく、売りからも取引を始められるので、下落時でも投資機会を得られる。
金価格は10年単位で大きく変動するため、短期投資では売り時をいったん逃すと長期間含み損を抱え続けることになってしまう。CFDの場合には、損失が一定の割合を超えると追加の証拠金を求められたり、強制的に決済されて損失が確定したりすることになる。短期売買の場合には売り時を見極め、場合によっては損切りする覚悟も重要だ。
(大山弘子・ライター)
(本誌初出 金の投資術 含み損に注意! 長期投資なら「積み立て」最適 短期売買はタイミング見極め=大山弘子