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サイバー空間の米中貿易戦争 中国が圧倒的スピードで5G導入を進める裏で、「データの輸出規制」が進む理由

    5G対応のスマートフォンは急速に普及している(Bloomberg)
    5G対応のスマートフォンは急速に普及している(Bloomberg)

     2019年11月に中国で第5世代通信規格「5G」の商用サービスが始まってまもなく1年。この間、中国は対応端末の普及や基地局の建設など、5Gの拡大を進めてきた。

     中国情報通信研究院の9月10日の発表によると、1~8月の携帯電話出荷台数は19・5%減の2億230万台だったが、これは4G対応端末の販売が大幅に減ったことが大きい。他方、5G対応スマートフォンの出荷台数は9368万台と前年同期の29万台から激増。年末には1億8000万台に達するとの見方もある。

     5G基地局は6月末現在で40万カ所建設され、年末までに60万カ所を超える見込み。日本の目標は23年度末で21万局であるのに比べて早さが際立つ。

     ハード面を中心に5Gの整備が急速に進む中国だが、課題は少なくない。中国の携帯電話最大手、中国移動(チャイナモバイル)の董昕・総経理は「5Gは建設運営コストの大幅上昇、科学技術イノベーションの連携能力の不足、産業融合体系の未整備という『3大難関』に直面している」と率直に語っている(『経済日報』20年7月29日)。

     また、「今のところ5Gで変わったと実感できるものはない」(日系企業の北京駐在員)との声も聞かれる。超高速、超低遅延、多数同時接続という5Gならではの優位性を生かしたサービスの充実も今後の課題だ。中国の産業政策を担う工業情報化省の聞庫・情報通信発展局長も7月23日の記者会見で「まだ商業化の初期段階」とした。

     とはいえ、5Gの拡大で、今後は「21世紀の石油」とも称されるデータの流通量が加速度的に増えると予想される。こうした中、データの取り扱いに関わる初の包括的な法律とされる「データセキュリティー法」の草案を7月3日付で公示するなど、データ流通規制を強化する中国の動向には留意が必要だ。

    データ流通の米中摩擦

     草案は「データの国境を越えた安全、自由な流通の促進」を基本方針とする一方、輸出規制がデータにも適用されることを明確化している。また、法執行協力について、「国外の法執行機関が、中国国内に保存されたデータを取り寄せる際は、関連主管機関の許可を得なければならない」と定めている。この措置は、米国が18年、米国内に本拠地を持つ企業が国外に保存しているデータを令状なしで開示要求できる「クラウド法」を制定したことに対する対抗手段と指摘されている。

     さらに中国は9月8日、データに関する世界基準の設定を目指す「グローバルデータ安全イニシアチブ」構想を発表。米国が中国企業の排除で安全なネットワーク環境の構築を狙う「クリーンネットワーク計画」の対抗手段とされる。データ分野でも米中摩擦が激化している。

     データの国境を越えた流通に対する規制強化が懸念される中、米国企業はデータ関連政策など制限的規定によって中国市場に参入できないという問題の解決を求めている。日本としても、19年6月に大阪で開催された主要20カ国・地域(G20)首脳会議で合意した「信頼性のある自由なデータ流通(DFFT)」の概念に基づく政策を求めていく必要があろう。

    (真家陽一・名古屋外国語大学教授)

    (本誌初出 5G対応スマホは1億台に 強まるデータ流通規制=真家陽一 20201006)

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