資源・エネルギー電力・ガス大再編

「アップルストアの入居がきっかけ」のマルイほか、日本の大手企業が再エネ100%を目指しているワケ

     日本の大手企業が再生可能エネルギー(再エネ)を本格的に活用し始めた。

     小売り大手の「丸井グループ」(丸井G、本社・東京都中野区)は今年4月、再生可能エネルギーで発電した電力の販売を開始。グループの子会社でビル管理事業を手掛けるマルイファシリティーズが電力小売事業者となり、まずは「新宿マルイ メン」「柏マルイ」など3店舗への電力供給を始めた。

     マルイファシリティーズの電力調達先はリサイクル事業者の「いわて県北クリーン」(岩手県九戸村)。同社は、生活ごみなど廃棄物を焼却する際の熱を利用して高温高圧の蒸気を作り、その蒸気でタービンを回して発電を行う「廃棄物発電所」を運営する。廃棄物発電は再エネの一つであるバイオマス発電に分類される。

    アップルがきっかけ

     丸井Gは2018年に、再エネ発電や電力小売りを手掛ける「みんな電力」(本社・東京都世田谷区)に出資し、同社を通じて「新宿マルイ本館」の使用電力を再エネ100%に切り替えている。きっかけは、同館に米アップルの直営店「アップルストア」がテナントとして入ったことだ。アップルは自社で使う電気を再エネ100%で賄っており、サプライチェーンにも再エネ100%を求めている。丸井Gがアップルの要求に応えるためには、ビル全体の電力を再エネ100%にする必要があったという見方もできる。

     丸井Gは使用電気を再エネ(Renewable Energy)100%に置き換える国際的な取り組み「RE100」にも参加。今年、電力事業に本格参入したのも、「みんな電力」だけでは再エネ由来の電気を十分に確保できないからだ。

     同様の動きはRE100参加企業(表)をはじめ、日本を代表する企業の多くに広がりつつある。ここ数年、企業の再エネニーズは急速に高まっている。CSR(企業の社会的責任)に加え、二酸化炭素(CO2)排出削減が国際競争に影響を与えるほか、世界の巨額なESG(環境・社会・企業統治)投資を受けやすくなることがある。再エネ電気利用の動きは欧米企業から始まり、最近では関係する日本企業にも同じ取り組みを求めるようになっている。

     日本では12年に導入された再生エネルギー固定価格買い取り制度(FIT)によって、太陽光発電を中心に再エネが急激に拡大した。太陽光発電だけでも、19年末時点で6300万キロワット(太陽光発電協会調べ)に達している。これは、現在再稼働している原発では最大の関西電力大飯原子力発電所3号機や4号機(各118万キロワット)の50基分以上の規模だ。

     しかし、FIT制度の下では、発電した電気は「CO2を排出しないという環境価値」は買い取り価格の補填(ほてん)分に含まれるとされ、火力発電と変わらない電気として需要家に販売される。電気の需要側、特に企業にしてみれば、「再エネの電気を直接使いたい」と思えば、現状では自ら再エネを発電して自分で使うか、またはFITの認定を受けていない再エネ電気を相対で買うしか方法がない。

     また、「CO2を排出しない再エネ電気」として、再エネの環境価値分のみを分離した「グリーン電力証書」や「非化石証書」を組み合わせる方法もあるが、わかりにくい制度ということもあり、社会の理解を得にくく、追加コストもかかる。大量の再エネ電源がありながらも、企業にとっては「使える再エネが全然足りない」(ある大手企業)というのが現状だ。

    発電側と需要家に恩恵

     丸井Gの電力調達の手法は、コーポレートPPA(電力販売契約)の一種である「オフサイト型PPA」と呼ばれるもので、注目されている。

     コーポレートPPAとは、電力需要家が特定の発電所と契約して電力供給を受ける仕組みだ。

     日本では発電事業者が、需要家の事業所の屋根上に太陽光発電パネルを設置して電力を供給する「オンサイト型PPA」が、オフサイト型PPAよりも先に拡大した。日本でオフサイト型PPAを事業化するには、送電線を利用するための託送料金や、オンサイト型PPAでは対象外だった再エネ賦課金などのコスト負担ほか、発電側と需要側での需給管理が必要となるなど課題も多いが、導入すればESGへの取り組みで評価が上がる。

     オンサイト型PPAビジネスを手がけるのは、関西電力など大手電力会社をはじめ、NTTアノードエナジー、VPP Japan、ネクストエナジー・アンド・リソース、Looopなどが参入している。代表格とされるVPP Japanは、導入量が昨年末で約1万キロワットあり、21年末に10万キロワットに拡大するとしている。PPAは拡大傾向にあるといえよう。

     だが、屋根上では設置できる太陽光発電の量に限界があり、多くても顧客が使用する電力の20%を賄うのが限度とされる。このため、企業のニーズを満たすには、欧米で普及しつつある、事業所敷地外にある再エネ発電所から供給を受けるオフサイト型PPAの拡大が必要となる。

     海外では、すでにアップルやグーグルなどが、オフサイト型PPAで再エネ電源を十分に確保しており、マクドナルドやウォルマートもPPA契約を拡大している。台湾の大手半導体メーカーTSMCも、巨大洋上風力発電プロジェクトに参加、締結したPPA契約は現段階で世界最大だ。

     日本では気候変動対策に積極的な企業の集まりである「日本気候リーダーズ・パートナーシップ」(JCLP)は、「JCLPコーポレートPPA組成プロジェクト」を始めており、JCLP加盟の発電事業者と需要家が参加し、今年度内にオフサイト型PPAの案件実現を目指している。

     PPAは発電事業者側にもメリットがある。事業用太陽光発電は22年度にもFITの対象外になることが決まっているが、PPAは需要家との長期契約が担保されるため、FITに代わる収入が安定した再エネ発電事業となる。

    (本橋恵一・Energy Shift編集マネージャー)

    (本誌初出 再エネ100%に動く大手企業 「電力契約」活用は世界的潮流=本橋恵一 20201006)

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