経済・企業深層真相

旧経営陣がアップルに適正価格で売る努力を怠ってきた結果の「赤字垂れ流し」 JDI新会長スコット・キャロン氏は悪しき企業体質を改善できるのか

スコット・キャロン会長
スコット・キャロン会長

 赤字脱出の出口が見えない中小型液晶大手のジャパンディスプレイ(JDI)。2021年3月期に7年連続の赤字が避けられないとみられる中、今年3月に就任したスコット・キャロン会長(55)=写真=が救世主になれるかが関心を集めている。具体的には、売上高の60%を占める米アップルとの取引条件の改善を、キャロン会長が主導することができるかどうかが、JDI再建を左右しそうなのだ。

 米国出身のキャロン氏は在日滞在が通算で約30年にわたり、流ちょうな日本語を操る。同氏が社長を務める独立系投資顧問会社いちごアセットマネジメントがJDIに1108億円出資することを決定し、キャロン氏がJDI会長として経営陣に乗り込んできた。

 同社の経営不振ぶりは、売上高に占める製造費用の異常な高さをみれば一目瞭然だ。売上高に対する総製造費用の割合が過去2年間で90%台後半に上り、販売管理費を賄うことができていない。事情に詳しい業界関係者は、「旧経営陣がアップルに対して適正価格で製品を売る努力を怠ってきたことが赤字垂れ流しの真相だ」と指摘する。

 キャロン氏はアップルの本拠地であるシリコンバレー育ち。前出の業界関係者は、「本音をぶつけることができる電話会議に参加するだけでも、取引条件の改善には効果があるはずだ」と期待する。

(本誌初出 JDI再建のかぎ握る米国人会長 20201013)

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