「STUDIOUS」「niko and ...」や「loft」が中国で大人気のワケ……徹底したローカライズと役員陣頭指揮による本気の中国市場戦略がカギ
中国に新規出店した日本のファッション、雑貨専門店が好調なスタートを切っている。
TOKYO BASEは昨年8月、日本のデザイナーブランドと日本縫製にこだわる自社ブランドを取り扱うセレクトショップ「STUDIOUS TOKYO」の中国大陸1号店を上海に開いた。
これを皮切りに、今年6月に深圳、9月に北京に出店。12月には成都での4号店をオープンする。
北京店の初日は盛況で、売上高が100万元(約1500万円)を超えたようだ。顧客の半数以上は日本の店舗で買い物をしたことがある既存顧客だったという。Tシャツが1000元(約1万5000円)以上と高級だが、ファッション感度の高い層が固定ファンになっているようだ。
「ニコアンド」に行列
アダストリアが昨年12月に上海に開いたライフスタイルブランド「ニコアンド」の海外1号店も絶好調。
オープン初日から入店待ちの行列ができ、1日で約1万人が来店。開店から1カ月の売上高は計画の2倍に及んだ。
コロナ禍で2~4月は苦戦したが5月から復調、6~8月は完全復活した。1~8月売上高は、年初の年間売り上げ目標をすでに超えている。
同社は中国で約10年間、自社のアパレルブランドを複数集めた「コレクトポイント」を展開したが、赤字続きで昨年撤退。その教訓を生かし、ニコアンドではローカライズ(現地化)に力を入れる。
地元で人気のデザイナーブランドとのコラボレーションやKOL(キーオピニオンリーダー)の活用などで、ファッションに敏感な1990、2000年代生まれの女性に人気の「潮牌(チャオパイ)(ストリートブランド)」の地位を確立しつつある。今年12月には早くも2号店を上海に出店する予定だ。
ロフトは7月、雑貨店「ロフト」の海外直営1号店を上海に出店。初日から入場待ちの行列が途切れず、7、8月は毎日平均8000人前後が来店した。
日本製や日本企画の生活雑貨と健康雑貨、化粧品、文具を販売。中国の若手クリエーターとのコラボ商品にも力を入れる。
日本製の化粧品や生活雑貨のほか、ダルマやお守りといった日本の開運アイテムも人気だ。
同社取締役執行役員の庄野桂一郎氏は「生活を豊かにするライフスタイル系が求められ、我々のような雑貨のセレクトショップへのニーズが拡大している。良いタイミングで進出できた」と述べる。
中国で成功する日本のファッション、雑貨専門店は、「ユニクロ」と「無印良品」くらいで、最近もストライプインターナショナルなど大手アパレルの撤退が続く。
3社が好発進できたのは、コロナ禍で中国の消費者が日本で買い物できなくなっているほか、ライフスタイルショップの流行、各店のローカライズとコト消費への注力が奏功したと見られる。中国市場に懸ける「本気度」も3社に共通する点だ。
アダストリアとロフトは、日本本社の取締役クラスが陣頭指揮を執る。TOKYO BASEは、社長自らが新型コロナウイルス禍前まで中国に足を運び、出店先選びなどをしていたようだ。
中国市場の変化は日本の数倍と言われているが、コロナ禍でそれが加速している。権限を持つトップクラスの人材が現地にいなければ、対応は難しい。
(岩下祐一・「繊維ニュース」上海支局長)
(本誌初出 ロフトなど日本ブランド 好調の裏に「本気度」=岩下祐一 20201020)