経済・企業不動産コンサル長嶋修の一棟両断

東京でこの先「1980年代と同じバブル」が発生する理由と背景……コロナの被害が比較的軽微な東京は狙われている

昭和60年、バブルで不動産屋に買い取られ更地となった空き地が目立つ。バブルは1990年に崩壊
昭和60年、バブルで不動産屋に買い取られ更地となった空き地が目立つ。バブルは1990年に崩壊

筆者は10月1日放送のNHK「クローズアップ現代+」に出演し、1980年代に見られた不動産バブルの兆しが垣間見られることを説明した。

総合不動産サービス大手のJLLによると、2020年第2四半期(4~6月)の商業用不動産(オフィスやホテルなど)投資額は、前年同期比55%減の1070億ドルとなり、コロナの影響が露呈した。

渡航制限やロックダウン(都市封鎖)により経済が打撃を受け、3月中旬から6月初旬にかけて影響が顕著に。

第2四半期の投資額はアジアやアメリカ大陸、ヨーロッパなど全ての地域で減少した。

ところが、東京だけは投資の勢いが衰えていないのだ。

今年上半期の都市別投資額をみると、前年並みの150億ドル(約1・6兆円)だった東京が1位に躍り出た一方、2位のニューヨークは109億ドルで前年同期比38%減、3位のパリは83億ドルと同28%減だ。

落ち込みの大きい都市はロサンゼルス、ロンドンが54%減、上海が48%減と目立っている。

コロナ禍で日米欧とも史上空前の財政出動と金融緩和、とりわけ日米は無制限金融緩和をアナウンスすることで、08年のリーマン・ショックのような金融システム崩壊が回避され、当面の資金繰り不安がなくなると、市場には膨大なマネーが残った。

同時に日米欧はもちろん、新興国も一斉に利下げに動いた結果、世界中から金利が消えようとしている。

岡三証券によると、主要20カ国のうち1年物金利がマイナスになったのは日欧15カ国。

米国やカナダ、オーストラリアでも6年物まで年0・5%未満に下落し、明確なプラス水準を維持しているのは中国とインドだ。

国債、社債が運用益を生まなくなった今、あふれるマネーをどこに振り向けるのか。

不動産は有望な選択肢ではあるが、大きなリスクは取れない。

そうした中、相対的にコロナの感染者や死者数が少なく、経済的影響も小さかった日本、とりわけ東京の不動産に資金が向かうのは必然ともいえるのだ。

市場支える日銀の買い

ニューヨーク市はコロナ陽性率上昇に伴い、学校閉鎖や営業停止を一部地域で実施。

パリ首都圏はコロナ感染状況の警戒レベルを最大に引き上げ、バー閉鎖など再び経済活動が停滞する可能性がある。

そんな中、日本は「Go To トラベル」に東京が追加され、「イート」なども加わったのだ。

とはいえ、失業率や有効求人倍率はかつてのように回復しないだろう。

冬の賞与もさして期待できない。

生産性の向上やロボット化、AI(人工知能)化が一気に進むものと思われる。

不動産市場において、売り上げが減少した法人や個人への家賃支援給付金は事実上の公的資金注入だ。

日銀による不動産投資信託(REIT)や上場投資信託(ETF)買い入れは不動産や株式市場支援策。雇用や所得が高まらない中、不動産や株式などのリスク資産の上昇を契機とした1980~90年代のバブルが発生する可能性が高いと筆者が見る背景は、このようなものだ。

(本誌初出 東京に集中する世界マネー/67 20201027)


 ■人物略歴

長嶋修 ながしま・おさむ

 1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て、99年個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立

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