全米最大の公的年金が中国の新興EVメーカーの株を買い増していたワケ
総資産4000億ドル(約41兆5800億円)。全米最大の公的年金基金であるカリフォルニア州退職年金基金(カルパース)がこの7~9月の間に、中国の新興電気自動車(EV)メーカー、蔚来汽車(NIO、上海市)の株を買い増していたことが分かった。米証券取引委員会(SEC)に提出した文書で明らかになった。 オンライン独自特集「中国EV旋風」はこちら
設立3年でNYに上場
NIOは2015年5月の設立で、18年9月に中国の新エネルギー車(NEV)メーカーとして初めて米ニューヨーク証券取引所に上場。今月2日には時価総額が一時449億4600万ドルに達し、上場後わずか2年で、中国最大の自動車グループ、上海汽車集団(上海市)の中国市場での時価総額を上回った。
中国の新興EVでは筆頭格
NIOは中国の新興EVメーカーの中でも筆頭格で、勢いに乗る理想汽車(上海市)や威馬汽車(WMモーター、上海市)、小鵬汽車(Xpeng、広東省広州市)を販売台数でリードしている。
10月の新車販売台数(引き渡しベース)は5055台に達し、18年6月の販売開始以来、初めて5000台を超え、単月として過去最高を記録した。月間1000台が一つの目安とされる中国EV市場で、販売を優位に進めている。
決算は上場以来赤字が続いているが、赤字幅は縮小傾向にあり、好調な販売に寄せる市場の期待は大きい。
充電3分の交換ステーション
NIOが主力とするのはSUV(スポーツタイプ多目的車)の「ES6」(写真)。航続距離は最大610キロだ。価格は日本円にして500万円以上と高額だが、同社は車載電池の交換ステーションを中国各地に設置し、全自動式でわずか3分で電池の交換を完了するサービスを導入している。ほかにも、走行中に充電が切れた時に備え、言わば救急車のような充電設備搭載車両を用意している。こうしたEVメーカーとしての新しいビジネスモデルをカルパースは高く評価したのかもしれない。
ただ、たびたび車両の発火事故を起こしており、安全面での懸念払拭が今後の課題となりそうだ。
(川杉宏行・NNA中国編集部)