経済・企業コロナに勝つ転職

入社1年目の新人もリストラ対象に……すでに昨年の2倍に達した「コロナリストラ」が他人事と笑っていられないワケ

    パン粉工場を突然解雇された埼玉県の男性。無理やり書かされた退職届の理由欄には「理不尽かつ身勝手な理由によるリストラ」と記入した=埼玉県で2020年4月8日午後3時14分、本橋敦子撮影
    パン粉工場を突然解雇された埼玉県の男性。無理やり書かされた退職届の理由欄には「理不尽かつ身勝手な理由によるリストラ」と記入した=埼玉県で2020年4月8日午後3時14分、本橋敦子撮影

    地方では1倍を割る地域も散見され、一部の職種を除き、雇用環境は人余りの様相を呈している。

    東京商工リサーチの集計によると、上場企業が行った早期・希望退職者の募集は19年は35社が募集を行い、対象人数は1万1351人と、13年から6年ぶりに募集人数が1万人超を記録した。

    一方、その目的はIT人材の獲得や新規事業への経営資源集中などを目的とした“前向きな”ものも少なくなく、業績が堅調な企業による実施が多かったことから「黒字リストラ」などとも呼ばれた。

    しかし今年に入り、新型コロナウイルスの影響で状況は一変。

    緊急事態宣言が発令された4月以降は中小零細の飲食業を中心に、全く売り上げの立たない企業も続出する前代未聞の事態になった。

    当然、上場企業への影響も大きく、百貨店やアパレルを中心に月次売り上げが前年同月で7、8割減となる企業が続出し、国内の景況感は一気に様変わりした。

    それに伴い、上場企業の早期・希望退職の募集も月を追うごとに増勢をたどった。

    今年は10月末までで19年通年(35社)を2倍以上上回る72社で募集の開示が行われ、対象人数も昨年通年を上回る1万4095人に膨れ上がっている。

    70社を超えたのは、リーマン・ショック明けの10年(85社)以来、10年ぶりの水準だ。

    72社のうち、主な上場企業の募集人数の多い上位20社をまとめた(表)。

    入社1年の若手も対象

    募集を実施する企業を業種別でみると、新型コロナが直撃したアパレル・繊維関連が最多の13社(構成比18・0%)で約2割を占めた。

    特に、百貨店向けアパレルでは、2月に募集を開示したオンワードホールディングス(HD)を筆頭に、ワールド、TSIHD、三共生興、レナウン(5月に民事再生法の適用を申請後、破産手続きへ)の各社で募集を発表した。

    うち、新型コロナ感染拡大前に開示したオンワードHDを除く4社が、新型コロナによる影響を受けた後の募集だ。

    次いで、米中貿易摩擦と新型コロナの「Wパンチ」に見舞われた電気機器10社、自動車・船舶などの郵送用機器で各7社、緊急事態宣言下、営業の自粛を迫られた外食と小売りが次いで各6社と続く。

    昨年は、黒字リストラのワードが示すように、早期・希望退職の募集を行った35社中、募集時直近の決算が赤字だった企業は15社(構成比42・8%)で、半数以上の企業が黒字決算だったが、今年は72社中、38社(同52・7%)が直近本決算で赤字を計上。

    本決算が黒字だった企業でも、16社(同22・2%)が直近の四半期決算で赤字に転落した。

    新型コロナで短期間で一気に需要が消失した企業を中心に実施が目立つ。

    黒字から赤字への変化に加え、対象年齢にも変化があった。

    昨年は、カシオ計算機をはじめ、企業組織内の社員の年齢構成の是正を目的とする募集が特徴だった。

    中身も対象年齢やポジション(管理職限定など)・社歴に基準を設けたものが大半で、こうした基準を定めた募集は判明しただけで29社(構成比82・8%)と8割以上にのぼったが、今年は39社(同54・1%)と半数ほどにとどまった。

    年齢別では、昨年のボリュームゾーンは、「45歳以上」で15社が採用していた。

    しかし、今年は、年齢・社歴を定めている企業でも「新卒3年以上」「入社1年未満を除く」といった新人・若手も早期・希望退職の対象となった。

    経済や業績の悪化などで、上場企業もなりふり構わない募集を行わざるを得なくなっている状況といえる。

    だらだら続く可能性

    早期・希望退職が最も多かったのは、1997年のアジア通貨危機からITバブルが崩壊した後の02年の200件。

    次いでリーマン・ショックが日本に襲来した翌年とされる09年(196件)だ。

    09年の募集対象人数は2万2950人だった。

    今回のコロナ禍による早期・希望退職状況はリーマン・ショック時のような急上昇はみられていない。

    一方で、「リストラが高い水準でだらだらと続く」可能性はある。

    大きな理由が金融機関による支援状況の違いだ。

    リーマン・ショック時とは異なり、現状では当面の資金繰りにめどがついている上場企業が大半で、雇用調整助成金の特例措置によって一定の雇用も維持されていると考えられる。

    しかし、業績の回復度合いによっては手当てされた資金によって、いつまで事業がもつかは分からない。

    また、年明け以降も継続の方針が示された雇用調整助成金の特例措置もいずれは終わりが来る。

    ファミリーレストランのロイヤルホストを展開するロイヤルHDは、今春の店舗数見直しの発表の際には、早期・希望退職の予定はないとアナウンスをしていたが、10月下旬になり、一転して募集を発表した。

    このように退職者の募集を見計らっている企業が今冬以降、来春にかけて続々と募集してもおかしくない状況だ。

    今年は、小売りや繊維・アパレル、外食など、コロナによる「3密回避」の生活様式の変化による影響を受けた企業を中心に業績不振を背景とした早期・希望退職募集の悪習が沸き起こった。

    そして来年以降は、より川上の産業に波及し、さらに多くの業種、人を巻き込んだ終わりの見えないコロナリストラの波が続く懸念がある。

    (二木章吉・東京商工リサーチ情報部)

    (本誌初出 リストラ続出2 早期・希望退職は2倍以上 小売り、外食から他業種に波及=二木章吉 20201124)

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