経済・企業スマホ・5Gの新王者

ドコモ上場廃止の真の狙い?NTTは悲願の「東西統一」を果たせるのか

    巨大化は「吉」か「凶」か(東京・大手町のNTT本社)(Bloomberg)
    巨大化は「吉」か「凶」か(東京・大手町のNTT本社)(Bloomberg)

    1999年のNTT分社以来、経営陣が唱え続けてきた「グループ再統合」が現実味を帯びてきた。

    NTTが9月29日に発表した、NTTドコモを完全子会社化するというニュースは業界に衝撃を与えた。

    NTTはその裏で地域固定電話会社のNTT東日本とNTT西日本の再統合に向けて動き出した。

    赤字体質の固定電話事業を統合する一方、ドコモを中核としたグループ再統合を進め、グローバルプレーヤーに名乗りを上げる腹積もりだ。

    しかし、NTTにとって国際事業は失敗を繰り返してきた最大の難関でもある。

    携帯業界が大反発

    NTTは、約66%の株式を保有するドコモに対して、株式公開買い付け(TOB)を実施し年内にも100%子会社化する。

    取得価格は1株当たり3900円で9月28日終値(2775円)に4割もの割り増し価格を提示。

    TOBの総額は4兆2500億円で、国内では最高額だ。

    NTTはTOB資金の全額を金融機関から借り入れる予定で、TOBが完了すると有利子負債は約9兆円に上る。

    NTTは、ドコモを非上場化した後、NTTコミュニケーションズ(NTTコム)とNTTコムウェアをドコモと一体化する考えだ。

    9月29日のドコモ子会社化の発表時にNTTの澤田純社長は「一体化の議論はまだ足りない」と述べていたが、来春には一体経営について発表する見通しだ。

    NTTコムは99年に長距離通信会社として分社され、東西地域会社とともに持ち株会社の傘下に入り、現在は法人向けネットワーク事業が強い。

    NTTコムとの一体化によって、ドコモはKDDIやソフトバンクに比べて弱点だった法人向け事業を補う。

    NTTコムと重複する基幹通信網や拠点の統廃合による効率化もメリットだ。

    一方、グループ内のシステム開発が主体のコムウェアは、ドコモには重荷になるとの見方もある。

    ドコモとNTTコムの統合は10年以上前からNTT内で俎上(そじょう)に載っていた。

    ドコモの業績が頭打ちになったこの時期を好機と考えて、澤田社長は就任直後から具体策の検討に入ったようだ。

    だが、会見ではあえて、「完全子会社化によって携帯料金の値下げ原資が確保できる」と発言。

    政府の携帯電話料金値下げ圧力をグループ再統合に利用したきらいもある。

    ドコモの完全子会社化については、自民党や総務省も「制度的には何も問題がない」(同省総合通信基盤局)と了承し、公正取引委員会も問題視はしない見通しだ。

    ただ、業界からは反発が強い。

    11月11日、ソフトバンクやKDDIなど電気通信事業者28社は、ドコモの完全子会社化について「公正な競争環境が阻害される恐れがある」とする意見書を総務省に提出した。

    競争環境の確保に向けた措置を公開の場で議論することや、こうした措置をNTTに順守するよう指導することなどを求めている。

    ドコモはNTT法(日本電信電話株式会社等に関する法律)の規制の対象外だが、電気通信事業法の規制対象で、総務省は公正競争を検証するモニタリング制度などを検討することになりそうだ。

    NTTグループのもう一つの課題は東西地域会社の将来象だ。

    両社の加入電話件数は、ピーク時の4分の1の約1500万件(図1)まで減少したが、ネット技術を用いたIP電話を含めた固定電話事業は今でも7割以上の圧倒的なシェアを占めており、NTT法の規制対象になっている。

    もともと東西に分割した趣旨は、経営効率化による料金・サービス競争の促進だったが、もはや固定電話に競争の余地はない。

    NTTは、東西地域会社の分割の意義がなくなりユニバーサル(全国均一)サービス維持のために再統合が急務だと主張。

    澤田体制になってグループ再編の最終目標に「東西合併」を据えたという(図2)。

    複数のNTT幹部が「(澤田社長は)東西合併まで視野に入れた」と認めている。

    ドコモ・コムの経営統合と東西合併に向けた人事も動き出した。

    今年6月にNTT持ち株会社の栗山浩樹常務をNTTコム副社長に異動。

    10月には同じく持ち株会社の坂本英一執行役員をNTT西日本副社長に異動させた。2人とも将来の社長候補だ。

    グループ首脳は「栗山副社長はドコモとの一体化効果を最大化するためにコムの事業を整理するのが任務。坂本副社長は東西合併への地ならし」と解説。

    有能な人材を投入して再統合のアクセルを踏んだというのがグループ幹部の一致した見方だ。

    ただ、全国普及率9割を超える光ファイバー施設の75%を保有する東西地域会社の統合となると、第5世代移動通信規格(5G)を含む通信産業の競争環境に影響を与えかねない。

    ドコモの完全子会社以上にKDDIやソフトバンクなど他の事業者から強い警戒や反発を招くのは必至だろう。

    澤田社長が「国際競争力」の低さに危機感を抱いているのは確かだ。

    グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾンなど米国の巨大IT企業の市場支配力はすさまじく、圧倒的なインターネット需要を背景に国際通信回線敷設の主導権まで握り始めた。

    失敗続きの海外戦略

    NTTが「国際競争力」を盾にロビー活動にまい進するのは85年の民営化以来、繰り返されてきたパターンでもある。

    ただ、NTTの国際競争力は政治家の後押しを受けてどれだけ強くなったかというと、落第点といわざるを得ない。

    NTTグループは海外投資で失敗を続けているからだ。

    NTTコムは、2000年に米ネット会社ベリオを買収したが、わずか1年後の01年9月中間期で5000億円の減損損失を計上。

    買収額6000億円をドブに捨てたに等しい。

    ドコモは海外携帯電話事業者に総額2兆円以上を投資して株式評価損などで約1兆6000億円もの巨額損失を出した。

    NTTが約3000億円で買収した南アフリカのディメンション・データも海外のシステム開発事業の利益率は低迷したままだ。

    (岩見幸太郎・ジャーナリスト)

    (本誌初出 NTT再結集 東西会社の統合に動く 国際事業強化は「鬼門」=岩見幸太郎 20201201)

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