東京を差し置いて「石川・富山・福井」が豊かな県にランクインするワケ
(1)親世帯とは別に住居を構える、
(2)別居だが近くに住む、
(3)子供夫婦のどちらか一方の親世帯と同居する
──との選択肢だ。
これまでは(1)や(2)が主流だったが、今後、最も増加率が高まりそうなのが(3)だ。
いわゆる2世帯や3世帯が同居する住宅が増えると予想される。
「日本一豊かな県」「暮らしやすい県」などのランキングで、上位に名を連ねる富山県や福井県などは、もちろん、由緒ある歴史が残っていることや伝統・文化が受け継がれていること、自然が豊かであること、食べ物がおいしいことなど多くの理由がある。
しかし、実は「世帯当たりの所得が多い」ということは意外と知られていない。
総務省の統計によると、2018年度の1カ月当たりの世帯主の勤め先収入は、1位の東京都の51・7万円に対し、富山県は38万円で38位、福井県は43・1万円で21位と全く振るわない。
しかし、世帯員全員の現金収入を合計した実収入でみると、東京都が65・4万円に対し、富山県が61・9万円で7位、福井県が62・7万円で4位。
東京に肉薄する勢いであり、愛知県の56・5万円、大阪府の48・4万円、福岡県の53・9万円などと比べて圧倒的に高い。
これは富山、福井両県の住生活環境に理由がある。2世帯や3世帯同居が当たり前なのだ。
子供の世話は祖父母に
2世帯や3世帯同居が当たり前だと、どのようなことが起きるのか。
まず、出産後、子育て中の女性が社会に再進出しやすくなる。
おじいちゃんやおばあちゃんなどが子供の面倒を見てくれることは明らかである。
したがって、必然的に世帯収入は高まる。
また、水道光熱費はもちろん、食費などの生活コストも別居するより効率的だろう。
高齢世帯の資産も、次世代・次々世代のために使いやすくなるのはいうまでもない。
「専業主婦」といったものはとっくの昔に少数派になった。
いまや圧倒的に共働き世帯が多いのだ。
この共働き世帯も、子育て期間中はどちらかが休業や労働時間減少を余儀なくされるが、複数世帯同居ならフルタイムワークも可能である。
高齢世帯が都市部や都市部郊外にすでに住んでいる世帯があり、給与所得者の給与が減少を続けていることから、都市部では多くなかった2世帯、3世帯同居も今後増加するのではないかと筆者は見ている。
都市部や都市部郊外にある親の住宅を建て替えたり、あるいは増改築して複数世帯で住んだりすることは効率的である。
また、親の住宅を売って資金を捻出し、新規に複数世帯住宅を求めるなどの方法も有効だ。
年末年始など親族が集まる際には、親子で今後の暮らし方について話し合ってみてはいかがだろうか。
(本誌初出 複数世帯住宅で世帯年収アップ/72 20201201)
■人物略歴
長嶋修 ながしま・おさむ
1967年生まれ。広告代理店、不動産会社を経て、99年個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所」設立