近藤佑太朗 ユニット代表 外泊するほど家賃を安く
家に帰らない日は、家賃がかからない──。ホテルや民泊施設の部屋を1カ月単位で借り、外泊分の家賃を割り引くサービスがコロナ禍で伸びている。
(聞き手=岡田英・編集部)
昨年の春、ふと思ったんです。1カ月の半分くらいは地方出張などで家に帰らないのに、毎日家にいる人と同じ家賃を払うのは、すごくもったいないなと。そこで思いついたのが、家に帰らない日は家賃がかからないサービス「unito(ユニット)」です。
自社サイトに掲載しているホテルや民泊施設の部屋を、原則1カ月単位で借りられます。外泊する72時間前までにスマートフォンのアプリを通じて申請すれば、外泊日数分が家賃から引かれます。外泊する日は清掃が入り、ホテルとして貸し出されます。外泊中も荷物は鍵付きのクローゼットに保管しておくことができます。
東京都千代田区、渋谷区の2カ所にある直営ホテルのほか、約300のホテルや民泊施設と提携。東京都心を中心に約2500室を用意しています。
例えば、恵比寿駅徒歩7分の直営施設「unito EBISU(ユニット・エビス)」(渋谷区)のワンルームは家賃月13万4000円ですが、10日外泊すると8万9000円。15日なら6万6500円です。
利用者で最も多いのは、1人暮らしをしているが、恋人や友人の家や郊外の実家に泊まることが多い20~30代の未婚層。使う分だけ家賃を払うという考え方に納得感を持つ人が徐々に増え、9月末で利用者は月間約180人、宿泊数は同約2800泊となり、サービス開始からの半年で10倍弱に増えました。
マンション空室にも
もともと起業したいとは思っていました。大学に入った頃、小遣い稼ぎに訪日観光客のツアーガイドを自分でサイトを作ってやってみたら楽しくて、観光立国クロアチアのビジネススクールに観光・経営を学びに留学。帰国後、立ち上がったばかりの民泊仲介大手Airbnb(エアビーアンドビー)の日本法人で、知人の仕事を手伝う中で、民泊という新しいビジネスが急拡大していく過程を目の当たりにしたんです。自分も、新しいサービスを作りたい思いが強まり、大学在学中の2017年に起業しました。
最初は、宿泊拠点を世界中に作り、泊まり放題の定額サービスを構想していました。2年半ほどで国内外に宿泊施設を7拠点作りましたが、収益性や運営に難しさも感じていました。ユニットを着想したのはそんな頃で、19年6月に事業転換することにしました。
そこから、友人のツテをたどって建築設計やウェブデザイナーといった仲間を集めました。20年2月に7000万円の資金調達に成功し、ユニットのサイトを開設。コロナ禍で、出張や訪日客が減る中、ホテル・民泊施設との提携数は急増しました。「ウィズコロナ」は追い風ですが、逆にこの時期にどれだけ事業を大きくできるかが大事だと思っています。
今後は、マンションのデベロッパーと組み、既存物件の空室をユニットの仕組みで活用することも検討しています。来年には、外泊した分をポイントに換算して、関連サービスで使えるようにする事業にも参入したいと思っています。5年で常に5万人の利用者がいる状態を目指しています。
企業概要
事業内容:不動産の開発・企画・運営、宿泊施設の運営など
本社所在地:東京都千代田区
設立:2017年1月
資本金:6849万7000円(資本準備金含む)
従業員数:20人(アルバイト含む)
■人物略歴
こんどう・ゆうたろう
1994年生まれ。東京都出身。明治学院大学経済学部国際経営学科に在学中の2017年1月、前身の「CARAVAN JAPAN(キャラバン・ジャパン)」を設立。ゲストハウスなどの宿泊施設を国内外で7拠点運営したが事業売却し、20年2月に外泊した分の家賃を割り引くサービス「unito(ユニット)」を開始。社名もサービス名に合わせて変更した。26歳。