スムーズなつなぎ融資が命運を分ける……中小企業の倒産がこの先爆増することが懸念されているワケ
2020年は新型コロナウイルスの影響で経済情勢が大きく変化し、企業の倒産動向にも大きな変化をもたらした。
コロナ以前、19年後半からは倒産が増加基調となっていた。
そのため20年に入ってからも倒産は増加するとみられていたが、コロナ対策のための金融支援によって倒産が抑えられ、8月以降は倒産件数が前年同月を下回る状況が続いている。
一方で企業における景況感は厳しい状況が続く。
帝国データバンクの景気動向調査では、コロナによる緊急事態宣言が発出された後、景気DIは25・2まで悪化(5月調査)。
その後徐々に回復し、11月調査では35・4と回復しているが、コロナ以前を大きく下回り低水準の状況が続いている。
こうした状況で倒産がいつまでも制御されるとも思えない。
例えば、コロナ禍で中小企業の資金繰りを支えてきた一つに信用保証協会によるセーフティーネット融資がある。
信用保証協会の保証承諾件数の推移をみると、コロナ以前は月当たり5万~6万件だったものが、3月には10万件に達し、6月には30万件を超えピークを迎えた。
その後、件数は下降線にあり、ある程度資金が行き渡ったようだが高水準にある(図)。
心配されるのは、この当時に調達した資金が底をつき始めるタイミングだろう。
コロナ後の緊急融資では固定費の半年ほどを賄う額の融資実行が多かったと聞かれる。
そのため、早いケースでは既に金融機関へ再度の融資申し込みが行われており、資金需要が高まる年末から20年度末にかけ申し込みが増加する可能性がある。
そこでスムーズな調達ができないと経営に行き詰まるケースが出始めることも考えられる。
リーマン・ショック(08年)当時を振り返ると、信用保証協会の保証承諾件数は08年に約130万件に達して当時のピークとなったが、その返済に窮した企業向け融資への代位弁済がピークを迎えたのはその翌年で10万件強だった。
今回も同様の推移をたどるとは一概に言えないが、資金繰り支援のための融資にも限界はあるだろう。
経済活動が再開されるなかで、事業性を判断したうえで追加融資に応じるか否かが判断されるものとみられ、見通しの立たない企業へは厳しい対応も予想される。
帝国データバンクの調査では、企業側からみた金融機関の融資姿勢DIは11月調査で55・7となり、最近のピークだった6月調査の58・9から徐々に後退している。
この融資姿勢DIは、コロナ以前からの金融緩和による金融機関の積極的な融資姿勢が続き、13年初旬から55を上回る水準で推移してきた。
現在も資金調達環境は企業に良好のようだが、変化の兆しがあるのかもしれない。
コロナで一時急速に冷え込んだ景気は、徐々に持ち直しの動きがみられるが、それも業界ごとに回復の度合いはまちまちだ。
特に飲食店や観光関連などは第2波、第3波という感染拡大によって大きな影響を受けており、注目される業種だ。
広告関連なども景況感の回復が他業種に比べて遅れている。
21年の倒産動向は、コロナの収束状況に左右される面はあるが、増加傾向に向かう可能性は十分考えられるだろう。
(丸山昌吾・帝国データバンク情報部)
(本誌初出 倒産 融資打ち切りで増加する=丸山昌吾 20201222)