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インフラ分野でデジタル化を世界展開 東原敏昭 日立製作所社長兼CEO

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都千代田区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市 公孝、東京都千代田区の本社で

    インフラ分野でデジタル化を世界展開

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── コロナ禍の影響は。

    東原 中国はすでに完全に回復していて、エレベーターや自動車などはコロナ以前よりも状況は良いくらいです。米国は厳しいとはいえ想定内の状況です。2019年に米JRオートメーションという製造ラインをロボットで自動化する企業を買収しました。自動車向けが中心でしたが、いまは医療向けに重点を移しており、コロナの影響は大きくありません。

     一方、日本はIT関連は好調ですが、設備投資については企業がまだブレーキを踏んでいます。

    ── 事業別ではどうですか。

    東原 日立の事業は、「IT(情報技術)」「モビリティー(鉄道やビルなど)」「ライフ(自動車関連や医療関連、家電)」「インダストリー(産業機器や水処理など)」「エネルギー(送配電機器や原発など)」の5分野で構成しています。20年4月ごろは先行きが見通せない状況でしたが、20年9月中間決算は、最大部門のITの利益率は11・4%と2桁です。モビリティーは全体では7・4%でしたが、エレベーターは2桁の利益率を出しています。連結でみればコロナ禍でも、20年度通期で営業利益率5%を見込んでいます。

    ── 7月にスイスの産業用電機大手、ABBから送配電機器事業を約7500億円で買収しました。日立にとって最大の買収案件ですが、エネルギー部門は20年度業績で80億円の赤字予想です。

    東原 買収に伴いABBが持っていた短い納期の受注残など無形固定資産の償却費605億円を計上することが影響しますが、償却費は来年度以降減少します。赤字は会計処理によるもので、現金収入が入ってこないことではないので気にしていません。ABBは良い受注案件を多く抱えていて、それらを日立に取り込めることのほうが大事です。例えば、英仏海峡に敷設する高圧直流送電プロジェクトなどが該当します。

    ── グループ再編を進めて、上場子会社の日立金属と日立建機の売却方針が報じられています。

    東原 決まったことはありません。日立は両社株式の過半数を持っていますが、株主がいる上場会社ですから、取締役会が強い権限を持っています。親会社として両社幹部に「3年から5年後にグローバルで戦える形をどう作るか」と問いかけています。そのためには投資も必要です。日立はIT関連への投資に注力しており、両社も方向が同じなら今後も一緒にやることができますが、全く違う方向の投資をしていくなら、子会社として連結のバランスシートに載せることはできないでしょう。

    環境に優しい鉄道

    ── 自動車部品を手掛ける日立オートモーティブシステムズは、ホンダ傘下の部品会社3社と21年1月に合併します。戦略は。

    東原 電動化に特化します。モーター、インバーター(直流・交流変換器)、ブレーキ、サスペンションなどの分野で24年までに世界シェア3位以内が目標です。

    ── 日立オートモーティブは、スバルの自動運転システム「アイサイト」を共同開発し、カメラの技術を提供してきましたが、スバルは他社製品に切り替えました。

    東原 それは大きな話ではありません。一時的にコストの関係でそうなったのかもしれませんが、技術では遜色ありません。それより日立にはモーター、インバーターなどクルマの駆動に関わる制御技術で強みがあるし、オランダのシャシー・ブレーキ・インターナショナル社を買収し、電動制御ブレーキなどにも強みを持っています。

    ── 日立が開発したIoT基盤を「ルマーダ」と名付けて、売り込みに注力しています。どのようなものですか。

    東原 日立はどういう会社かと問われれば、私の答えは、電力、鉄道、水処理など社会のインフラをデジタル・トランスフォーメーション(DX=デジタル技術を活用した変革)する会社です。日立の強みは、社会インフラの運用や制御など専門知識を熟知した上で、デジタル技術を導入できることです。ルマーダとは、こうした分野で顧客の課題を明確化して、ITやAI(人工知能)で課題解決するための基盤です。

    ── どんな事例がありますか。

    東原 16年に導入して以降、事例が1000件以上あり、関連売上高は1兆1000億円(20年度)の予想です。例を挙げるとデンマークの首都コペンハーゲンの地下鉄運行システムがあります。運転士なしで運行しており、駅や電車にセンサーを搭載して、乗客がどれだけ待っているのかを測定して、自動的に運行ダイヤを変える仕組みを取り入れました。客が多いと列車は早く到着し、そうでない場合は遅くなります。日本では乗客がいなくても時刻表通りですが、それでは二酸化炭素(CO2)を削減する効果を出しにくい。人間がちょっとの時間を我慢することで環境に優しいシステムを提供できるのです。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q これまでの仕事でピンチだったことは

    A JR東日本の中央本線で、甲府~東京駅間の信号自動化事業に携わり、品質関連の責任者でした。1995年ごろトラブルがあり、苦労しました。

    Q 「好きな本」は

    A 『7つの習慣』(スティーブン・コヴィー著、キングベアー出版)です。自分のマインドセット(思考習慣)を変える必要があると気付きました。

    Q 休日の過ごし方

    A 散歩です。季節の移り変わりを感じるのが好きです。


     ■人物略歴

    東原敏昭(ひがしはら・としあき)

     1955年まれ。77年徳島大学工学部卒業、同年日立製作所入社。2007年4月執行役常務、13年4月執行役専務を経て14年4月に社長兼COO、16年4月から現職。徳島県出身、65歳。


    事業内容:総合電機メーカー

    本店所在地:東京都千代田区

    設立:1920年2月

    資本金:4598億円(2020年3月末)

    従業員数:30万1056人(20年3月末、連結)

    業績:(20年3月期、連結)

     売上収益:8兆7672億円

     営業利益:6618億円

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