週刊エコノミスト Online2021年の経営者

都心へ乗り入れで沿線を活性化 滝沢秀之 相鉄ホールディングス社長

    JRとの相互乗り入れで使用している12000系車両の模型を前に
    JRとの相互乗り入れで使用している12000系車両の模型を前に

    都心へ乗り入れで沿線を活性化

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ―― 2019年11月にJR東日本との相互直通運転を開始して1年たちました。神奈川県が中心の相鉄沿線から、乗り換えなしで新宿に行けるようになりましたが、手応えや反響は。

    滝沢 まだ分からないというのが正直なところです。利用客が新規路線へ通勤経路を変更するには3年かかると言われています。新型コロナウイルスの影響が出る前の19年12月~20年1月は想定の半分の乗客数でした。その後のコロナ禍では相互乗り入れに限らず鉄道事業はかなり落ち込みました。今後の推移は読み切れていません。

    ── 新たに導入した新型車両の色も話題になっています。

    滝沢 横浜の海をイメージした「横浜ネイビーブルー」という特注色です。一方からは黒く、他方からはさめた青に見えて、駅でも目立っているようです。

    ―― 乗り入れに合わせ、沿線開発も進めています。

    滝沢 数年前から「6大プロジェクト」を掲げて開発を進めてきました。相互乗り入れを起爆剤として、多くの人に沿線に住んでもらうことが最終的な目標です。高齢者や子供連れの夫婦も住める環境を作るため、駅周辺で集合住宅の建設や商業施設のリニューアルを進めました。

     六つの計画のうち、いずみ野駅周辺の開発など三つは既に竣工(しゅんこう)しています。残る「ゆめが丘地区開発」「星川・天王町間整備計画」「鶴屋町地区再開発」が現在進行中です。特にゆめが丘の開発では、3世代のファミリー層をターゲットに約170店舗からなる大型集客施設を建設予定で、23年度下期の開業を目指しています。

    ―― 本業の鉄道より小売・流通業の売り上げが大きいですね。

    滝沢 商業施設の売り上げや不動産賃貸事業の利益が大きい会社です。スーパーマーケット「そうてつローゼン」を神奈川県内を中心に55店舗展開し、横浜駅周辺を中心に「相鉄ジョイナス」などの商業施設を運営して収益の柱になっています。コロナ禍で、巣ごもり消費などの需要が増えて今は追い風が吹いています。ただし、いずれは元に戻ると思うので、EC(電子商取引)など、いろいろな販売展開を強化していきたいと思っています。

    ―― ホテル事業については。

    滝沢 横浜駅西口のシティーホテルの「横浜ベイシェラトン ホテル&タワーズ」の他、「相鉄フレッサイン」37店舗、「ホテルサンルート」35店舗など宿泊特化型ホテルを展開していますが、非常に厳しいです。コロナ前はビジネス客とインバウンド(訪日観光客)の比率が6対4でした。今はインバウンドが消滅しており、ビジネス客がすべて取れても元の6割です。しかも新しい生活様式や働き方で、ビジネス客の6割も戻らないとすると、今後どう展開していくかは大きな課題です。ホテル事業はレジャー需要へのシフトが必要だと思っています。

    ―― レジャー向けの展開とは。

    滝沢 政府がいま需要喚起策を進めていますが、観光は将来にわたっても外せない事業になると思っています。従来のビジネス客だけでなく、夫婦や家族、友達など複数人での旅行はこれからも増えていく。例えば今の相鉄フレッサでは、そうした需要を取り込める部屋のサイズや機能をすべて備えているわけではないので、対応を進めていきます。

    東急線接続に期待

    ―― 22年度下期には東急電鉄との相互乗り入れが予定されています。

    滝沢 JRとの直通線から分岐して、新横浜駅を経由して日吉駅で東急東横線につながります。相鉄沿線から新横浜、さらには渋谷まで乗り換えなしで行けるようになります。

    ―― さらに便利になると。

    滝沢 新幹線の停車駅、新横浜につながると、相鉄沿線から関西方面へのアクセスなど利便性は格段に上がり、沿線に住んでもらえる可能性は高まると思っています。また、東急には他社線も乗り入れているので、相鉄も東京メトロや東京都営地下鉄、東武鉄道や西武鉄道とつながる可能性があります。相互乗り入れの拡大は長期的に追求していきたいです。

    ―― 鉄道では終電の繰り上げも話題になっています。

    滝沢 JRが終電の繰り上げを決め、当社も21年3月のダイヤ改正で15~20分程度、繰り上げる予定です。コロナの前から、深夜帯の乗客が非常に少なくなっていました。また、背景には鉄道工事の問題があります。大きな工事はすべて夜間に行いますが、終電から始発までは4時間ぐらいで、実質的な作業時間は2~3時間しかとれません。工事の時間を1日15分増やすだけでも工期短縮になり投資を削減できます。今、全駅にホームの保護柵を設置する計画ですが、この工事も夜間に進めているので、利用者の理解を何とか得たいと思います。(2021年の経営者)

    (構成=村田晋一郎・編集部)

    横顔

    Q 30代の頃はどんなビジネスマンでしたか

    A 商業施設の営業をやっていました。営業係長として30店舗のオーナーとそれぞれ正面から向き合った経験は今も生きていますし、非常に勉強になった時期でした。

    Q 「私を変えた本」は

    A 長塚節の『土』です。経済の重要性を感じ、大学で経済学部に進むきっかけになりました。

    Q 休日の過ごし方

    A 妻と買い物や散歩にいくことが多いです。また、趣味のゴルフに行くこともあります。


     ■人物略歴

    たきざわ・ひでゆき

     1959年生まれ、長野県野沢北高校、横浜国立大学経済学部卒業。84年相模鉄道入社。2010年相鉄ビルマネジメント専務、12年相鉄ホールディングス取締役、16年相模鉄道社長などを経て、19年6月から現職。長野県出身。61歳。


    事業内容:運輸業、流通業、不動産業、ホテル業

    本社所在地:神奈川県横浜市

    設立:1917年12月

    資本金:388億303万円

    従業員数:5118人(2020年3月現在、連結)

    業績(20年3月期、連結)

     営業収益:2651億円

     営業利益:264億2300万円

    インタビュー

    週刊エコノミスト最新号のご案内

    週刊エコノミスト最新号

    2月2日号

    ガソリン車ゼロ時代第1部 激変する自動車産業22 EVで出遅れる日本 市場奪取へ勝負の10年 ■市川 明代/白鳥 達哉26 図解・日本の雇用 製造から販売まで、2050年に80万人減も ■白鳥 達哉28 ガソリン車よりエコ! 生産から廃車まで、EVのCO2排出は少ない ■桜井 啓一郎31 インタビュ [目次を見る]

    デジタル紙面ビューアーで読む

    おすすめ情報

    最新の注目記事