国際・政治危ない中国

「チャイナ・セブン」に変化? 習近平「1強」はこの後どうなるのか

    G20に出席するため来日した習近平・中国国家主席=大阪府の関西国際空港で2019年6月27日撮影
    G20に出席するため来日した習近平・中国国家主席=大阪府の関西国際空港で2019年6月27日撮影

    中央政治局委員(委員)25人のうち18人が習人脈であり、盤石な習氏の「1強」体制が築かれた。

    また、最高指導部である中央政治局常務委員会委員(常務委員)7人へのポスト習候補の抜擢(ばってき)はなく、18年3月に国家主席の任期制が撤廃されたことで、健康上の問題がなければ、習氏が22年秋予定の第20回党大会以降も政権を担当することは確定的だといえる。

    江沢民氏や胡錦濤氏と異なり、すでに3期目の政権担当が約束された習氏は、抜本的な改革を行う必要はなくなった。

    政権を継続させるための実現可能な政策を決定し、その中に自らの政治ビジョンを反映させればよかった。

    しかし、米中貿易戦争と新型コロナウイルスの感染は想定外の事態だった。

    米国の中国批判は、貿易問題として当初大統領選挙でのトランプ大統領の再選のカードと見られた。

    だが、18年10月のペンス副大統領の中国批判演説は、「米中新冷戦」を予感させ、米中対立は中長期的に続く覇権争いの様相を呈している。

    そのことが中国国内のナショナリズムを高めているが、習政権は現状ではまだ米国とは対等に戦えないことを認識している。

    そのため、21年3月から始まる14次5カ年計画でイノベーションを掲げ、中長期的な時間軸で米国超えを図る狙いである。

    コロナ問題では、習政権の情報隠蔽(いんぺい)やマスク・ワクチン外交などへの批判が強調されがちだが、中国国内では習氏のリーダーシップへの支持は高い。

    他国に先駆けていち早く感染を抑制し、経済活動を再開させ、国際貢献をしていると評価されているためだ。

    成長鈍化への不安

    もちろん、米国と対抗ではなく協調を求める声、コロナ対応の初動の遅れなど、習政権の対応に、政権内や社会からの異論、批判がないわけではない。

    しかし、それが政権内での政策論争、さらには政局を左右するには至っていない。

    なぜならば、習氏「1強」の前に、抵抗勢力が組織化されないからである。

    例えば、政権内で孤立している李克強(りこくきょう)首相はその求心力にはなっていない。

    またウェイボーやウィーチャットなどのSNS(交流サイト)を通じた知識人やジャーナリスト、反体制活動家などの批判は少数で、政権は容易に書き込みを削除し、書き込んだ人の身柄を拘束することができるため、社会的な運動にはなっていない。

    そのため、習氏の3期目担当の障害にもなり得ない。

    香港問題も同じ構図である。習政権は大陸への影響を警戒し、香港国家安全維持法の施行により、香港の「1国2制度」を形骸化している。

    この現状は確かに由々しき事態である。

    しかし、香港には社会の安定優先への一定の支持層があり、デモへの大陸社会の支持は極めて小さい。習政権は香港問題を統制することができている。

    しかし中長期的に不安定要素がないわけではない。一つは一党支配崩壊への不安である。

    習氏は総書記就任当初からソ連崩壊を教訓にしてきた。

    習政権は、18年の党に行政権限を集中させる機構改革や法による国家統治の強化、20年の党中央委員会工作条例など党の規則の整備といった「党の指導」の制度化を進めてきた。

    それらは、習氏への権力集中だけでなく、一党支配体制を次世代以降も維持していくための措置ともいえる。

    もう一つは経済成長の鈍化である。

    一党支配の維持は、経済成長により所得が増え豊かな生活を実現したエリート層や中間層の支持によるところが大きい。

    習氏が政権を担当するあいだはこれまでの蓄積でしのぐことができそうである。

    しかし、経済成長の鈍化が続けば、豊かさを享受できなくなり、彼らの不満は共産党に向かうことは必至である。

    長期的な経済成長を確保するために、14次5カ年計画では、経済の質・効率重視の持続的成長をうたい、科学技術立国を目指すイノベーションや内需拡大を新たな成長点として掲げた。

    李氏、陳氏が有力

    最後に、少し気が早いが、22年の党大会を展望したい。

    まず、昨今取り沙汰されている「党主席制」の導入だが、習氏の3期目の政権担当への不満の声に対し、毛沢東に倣って自らの権威をさらに高めるためか、中央の要職の3選が禁止されていることへの戦術であろう。

    17年の党大会では導入できなかったが、現在の習氏「1強」体制の下では十分可能である。

    現状の総書記制の継続を前提に人事を予測すると、委員は68歳を超えると引退との内規があるといわれており、常務委員7人のうち、栗戦書(りつせんしょ)氏と韓正(かんせい)氏が68歳を超え、引退となる。

    習氏も69歳だが、留任に異を唱える者はいないだろう。

    67歳以下の4人は留任する。李克強氏は、同一ポストの3選は禁止されているため、序列2位のまま全人代常務委員長を兼務することになろう。

    次期首相には副首相経験があり、経済に明るい汪洋(おうよう)氏しかいない。

    習氏の信頼の厚い王滬寧(おうこねい)氏、趙楽際(ちょうらくさい)氏も引退する理由は見当たらない。

    共産党の一党支配の継続を願う習氏が、終身で政権を担当するとは考えにくく、74歳になる27年で引退する。

    そのため、常務委員には、若いポスト習時代のリーダー候補者が入る。

    予想されるのは、習人脈で、地方でリーダーとしての経験を積む李強(りきょう)氏(上海市党書記)と陳敏爾(ちんびんじ)氏(重慶市党書記)である。

    序列が上の者が次期総書記候補、下の者が首相候補となるため、ポスト習氏を占う重要人事として注目される。

    そこに李克強人脈の若い胡春華(こしゅんか)副首相が割り込む隙間(すきま)はない。

    日本との関係では、現在外交を取り仕切っている楊潔篪(ようけつち)氏の後継人事が注目される。

    外交担当者の中に目立った人材が見当たらないのが現状であり、22年に68歳を迎える王毅(おうき)国務委員・外相の昇格の可能性すらある。

    この人事レースは激化が予想され、対日強硬姿勢でのアピールが懸念される。

    (佐々木智弘・防衛大学校准教授)

    (本誌初出 習氏の権力 3選確定的で側近登用へ 「党主席」制の復活観測も=佐々木智弘 20210119)

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