週刊エコノミスト Online2021年の経営者

Gショックが中国で好調 樫尾和宏 カシオ計算機社長

    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市公孝、東京都渋谷区の本社で
    Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)Photo 武市公孝、東京都渋谷区の本社で

    Gショックが中国で好調

     Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

    ── 昨年11月に2021年3月期の通期営業利益予想を60億円から100億円に引き上げました。新型コロナウイルスの影響は想定ほど大きくなかったのですか。

    樫尾 いえ、そんなことはありません。売上高は20年3月期実績の2808億円に対して21年3月期見通しは2200億円ですから21%の減収予想です。昨年7月末に出した60億円の通期予想はあくまで参考値です。11月に出した100億円の予想は7月末予想から少し上方に振れた程度であって、前年度実績(291億円)に比べて65%の減益の見込みです。(2021年の経営者)

    ── 上方修正は、中国で主力商品の腕時計「G−SHOCK(Gショック)」の販売が好調だったことが主因でした。

    樫尾 中国では、商品と営業両面で時代に合った戦略を立てて、その効果が表れました。広告宣伝では、新聞・テレビなどの既存メディアではなくSNS(交流サイト)への発信重視に切り替えています。『三国志』をイメージしたモデルなどを発売したことが中国で受け入れられた要因だと思います。

    ── 時計事業の売上高が連結売上高の58%(20年3月期)を占め、Gショックが大黒柱です。

    樫尾 1983年の発売以降、累計1億1000万個以上の販売実績があります。このうち、3個以上のGショックを保有する熱心な顧客は約500万人いるとみています。当社の時計事業の営業利益率が21%(20年3月期実績)と高いのは、耐衝撃性などGショック特有のブランド力の高さが背景にあると考えています。

    ── Gショック以外の時計ブランドの状況は。

    樫尾 腕時計は生活必需品ではないのでコロナ禍の現状においては厳しい状況です。

     Gショック以外だと、衛星や地上から電波を受信して正確な時刻補正ができる「OCEANUS(オシアナス)」は今年度上期に百貨店で販売が不振で苦戦しました。特徴ある青色のデザインなどで評価が高いとはいえ、旅行向きという特性があり、コロナ禍では無理に販売しても効果は出せません。

    アシックスと協業

    ── 腕時計はこれから米アップルの「Apple Watch(アップル・ウオッチ)」に代表される多機能のスマート時計に移行していくのでしょうか。

    樫尾 必ずそのようになるでしょう。ある民間の調査会社によると、20年上半期(1~6月)、米国の販売金額でスマートウォッチが一般時計を上回りました。今後、この流れが加速すると思います。

    ── カシオのスマートウォッチの取り組みは。

    樫尾 歩数計がついた「G-SQUAD(Gスクワッド)」という派生モデルがありますがスマートフォンのアプリとの連動などの使い勝手の面で課題があります。そこで、当社はアシックスと提携して、スポーツでの利用や健康管理に適したウエアラブル・デバイス(身体に装着するデジタル機器)の開発を昨年1月末に発表しました。アシックスが買収した「ランキーパー」という、スマホと連動してトレーニングの目標設定や管理ができるアプリがあり、このアプリと連動する「アシックス・カシオモデル」の腕時計を21年春に発売したいと考えています。

    海外で強い関数電卓

    ── 時計以外では、海外で関数電卓が売れているようです。

    樫尾 海外では中学生、高校生向けに関数電卓を使った授業をしている国のほうが多いのです。コロナ以前の19年3月期の販売実績は2360万台でした。当社推計で年間約4500万台の需要があり、当社と米半導体大手テキサス・インスツルメンツが市場をほぼ二分しています。営業利益率も14%(20年3月期)あります。

    ── かつての電卓のように価格競争に陥ることはないのですか。

    樫尾 国によっては、試験の持ち込み機種に指定されていて必需品になっています。指定を受けるような信頼を得るには参入障壁が非常に高いです。ただ、カシオの偽物が19年に1000万台以上出回っており、対策を検討中です。

    ── 楽器事業は長年赤字が続きましたが、20年3月期に8年ぶりに黒字化しました。

    樫尾 コロナの影響の「巣ごもり需要」を捉えて唯一、前年同期比で売り上げが伸びたのが電子ピアノと電子キーボードの楽器でした。

    ── カシオは樫尾4兄弟(長男・忠雄、次男・俊雄、三男・和雄、四男・幸雄の4氏)が創業し、3代社長の和雄氏の長男である樫尾社長が4代目として経営を引き継ぎました。創業家の役割をどう考えますか。

    樫尾 樫尾家からは現在、私のほか隆司常務執行役員と哲雄取締役の3人が役員に就いています。創業家と当社との関係の整理については自分が考え、取り組むべき課題だと思っています。

    (構成=浜田健太郎・編集部)

    横顔

    Q 今まで会社でピンチだったことは

    A 常に今が大変だという感じです。

    Q 「好きな本」は

    A 伊藤忠商事の社長・会長を務めた丹羽宇一郎さんの『社長って何だ!』(講談社現代新書)は勉強になりました。

    Q 休日の過ごし方

    A ゴルフです。仕事とプライベートで半々くらいです。樫尾4兄弟の息子たちはみなゴルフ好きです。


     ■人物略歴

    樫尾和宏(かしお・かずひろ)

     1966年生まれ。桐朋高校、慶応義塾大学理工学部卒業。91年4月カシオ計算機入社。2007年7月執行役員、11年6月取締役執行役員、14年5月取締役専務執行役員を経て15年6月から現職。東京都出身、54歳。


    事業内容:時計、電子辞書、電卓、電子楽器などの製造・販売

    本社所在地:東京都渋谷区

    設立:1957年6月

    資本金:485億円(2020年9月末)

    従業員数:1万1193人(20年3月末、連結)

    業績:(20年3月期、連結)

     売上高:2808億円

     営業利益:290億円

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