週刊エコノミスト Online2021年の経営者

デジタル化追い風に世界トップ5に 本間洋 NTTデータ社長

Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都江東区の本社で
Interviewer 藤枝 克治(本誌編集長) Photo 武市 公孝 東京都江東区の本社で

デジタル化追い風に世界トップ5に

 Interviewer 藤枝克治(本誌編集長)

―― コロナ禍でリモート(遠隔)システムの導入など、NTTデータが得意とするIT(情報技術)需要が増えているのでは。

本間 情報サービス業界には今、大きく二つの風が吹いています。一つは顧客の事業そのものが厳しいという逆風。製造業、サービス業、旅行業などでは、予定していたIT関連の投資を縮小したり、延期する動きが出ています。

 一方で、事業をIT化やデジタル化で回復させようという前向きの動きがあります。例えば、テレワークの導入や作業の自動化、ペーパーレス化などです。こうした需要を取り込むことで、2020年9月中間決算は、売り上げ、利益ともほぼ前年同期並みとなりました。(2021年の経営者)

―― コロナで受注内容も変わりましたか。

本間 キャッシュレス対応など非接触のシステムや、テレワークができる環境整備のサービスは伸びています。特にインターネット回線があればパソコンやタブレットなどから安全に社内システムを利用できるクラウドシステム「ビズエクサース・オフィス」が代表的です。

 また作業の自動化は、金融機関を中心に加速しています。当社のヒット商品「ウィンアクター」は、パソコンの入力作業や編集業務などを自動化するソフトウエアです。エクセルやワードに請求書の数字を入力したり、インターネットを検索して収集した情報をコピーして貼り付けるなど、これまで人手をかけてやっていた定型業務を、ソフトが学習して自動でやってくれます。コロナ前から売れていましたが、3100社以上(20年8月時点)の導入実績があります。

住民目線のシステムを

―― 政府は今年9月にデジタル庁の新設を予定するなど、国や地方自治体のデジタル化を進めています。NTTデータはどう関わりますか。

本間 当社はこれまで、中央省庁や地方自治体、金融機関、一般企業などのシステム構築を数多く手がけてきました。そこで培った信頼があります。昨年10月には組織横断的な「ソーシャルデザイン推進室」を作り、新しいデジタル社会に貢献できる人材の育成に力を入れます。

―― ですが、過去を振り返ると住民基本台帳ネットワークシステムやマイナンバーなど、十分に活用されない行政サービスがあります。

本間 これからではないでしょうか。行政サービスも社会のデジタル化も、作ったシステムを徹底的に使えるようにすることが重要です。中央省庁の巨大システムはそれぞれ縦割りのことが多く、地方も都道府県や市区町村など数多くあり、住民視点での使いやすさはこれまで十分でなかったと思います。

―― 公正取引委員会は20年4月、NTTデータが運営する金融決済インフラ「CAFIS(キャフィス)」の利用料が固定的だと指摘する報告書を出しました。

本間 キャフィスはクレジットカードの決済や、QR決済サービスへの入金(チャージ)などの機能がありますが、キャッシュレスの普及によりPayPay(ペイペイ)や電子マネーのスイカなど決済業者が増えてきました。サービス開始当初に比べ少額決済が増え、(従来の料金体系では)手数料が少し高い状態となりました。20年10月1日には新しい料金体系に変えています。私たちは元々、キャッシュレス社会を普及させたい思いがあります。独占しよう、(過度に)もうけようという気はありません。

―― 公取委は、銀行間の資金決済ネットワークシステム「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」の手数料も問題視しました。

本間 キャフィスと違い、全銀システムは我々のものではありません。開発・保守を受託していますが、決済の手数料には関与していません。どういう計算で料金が決まっているのか分からないので、この件についてはコメントする立場にありません。

―― 親会社のNTTが昨年末、NTTドコモを完全子会社化しました。NTTデータはどうなりますか。

 NTTの澤田純社長は「NTTデータは上場を維持する」としています。我々はグローバルに事業を展開していて、世界53カ国に拠点があり、2025年までに情報サービス産業で世界トップ5に入ることを目指しています。澤田社長も私もNTTデータがグローバルで強くなることが重要だという認識で一致しています。

 そうなれば、例えばITなど先端技術を活用した街づくり、すなわちスマートシティーの構築でも、通信インフラはNTTやドコモ、情報のプラットフォームは我々というようにグループとしてこれまで以上に連携を深めていけます。

(構成=柳沢亮・編集部)

横顔

Q これまでの仕事でピンチだったことは

A 初めて法人分野の流通・サービス事業本部長に着任した2010年。問題を抱えたプロジェクトがあり、着任翌日に顧客に謝りに行きました。成長軌道に乗せながら問題解消するのに2年ちょっとかかりました。

Q 「好きな本」は

A 歴史本が好きです。山形県酒田市出身ですが、隣町の鶴岡市出身の藤沢周平さんの本は全部読みました。人情ものでほっこりします。

Q 休日の過ごし方

A ゴルフや水泳です。


 ■人物略歴

本間洋(ほんま・よう)

 1956年生まれ。宮城県仙台第一高校、東北大学経済学部卒業。80年旧日本電信電話公社に入社。88年にNTTデータ通信(現NTTデータ)に移り、広報部長、流通・サービス事業本部長などを経て2018年6月から現職。山形県出身。64歳。


事業内容:システムインテグレーション事業やネットワークシステムサービス事業など

本社所在地:東京都江東区

設立:1988年5月

資本金:1425億2000万円

従業員数:13万3196人(2020年3月末現在、連結)

業績(20年3月期、連結)

 売上高:2兆2668億800万円

 営業利益:1309億3700万円

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