教養・歴史鎌田浩毅の役に立つ地学

日本列島はいずれ消滅する?「パンゲア・ウルティマ超大陸」とは何か

地球上にある五大陸は、かつて1個の巨大な大陸が分かれてできたものである。

これは1915年にドイツの地球物理学者ウェゲナーが初めて提唱した「大陸移動説」で、第二次世界大戦後に大陸が移動しつつある証拠が次々と見つかった。

その後「プレート・テクトニクス」理論として完成し、今では「地球科学の革命」と評価されている。

「日本に近づくハワイにいずれ歩いて渡れる」というジョークがある。荒唐無稽(むけい)のようだが、地球科学的には全く正しい。

太平洋の底は「プレート」と呼ばれる厚い岩の板でできており、毎年8~10センチほどの速さで水平にゆっくり動いている。その結果、ハワイは約5000万年後に日本付近へ到達したあと、最後に日本列島の下に沈み込む。

同様に巨大な大陸も、プレートによって何億年もかけて移動しつつある。例えば、大西洋は現在でも広がりつつあり、北アメリカ大陸とユーラシア大陸、また南アメリカ大陸とアフリカ大陸は離れつつある。

逆に、大西洋両岸の地形がよく合うことは、かつて大西洋が閉じていたことを意味する。

地球は46億年の歴史を持つが、数億年ごとに大陸が合体と分裂を繰り返してきた。そして現在の五大陸もいずれ集合し、約2億~3億年後には「超大陸」として合体する(図)。

日本列島は消滅

この超大陸は「パンゲア・ウルティマ超大陸」もしくは「アメイジア超大陸」という名前が付けられている。

パンゲア・ウルティマは「最後のパンゲア」、またアメイジアとは「アメリカとアジアがつながった」という意味だ。

大西洋では海底にある中央海嶺(かいれい)でプレートが生産されることで、海が拡大しつつある。一方、太平洋では同様に東太平洋海膨でプレートが生産されるが、同じプレートの端にある日本列島や米国西海岸でプレートが沈み込むことで消滅しつつある。

したがって将来、一つの超大陸が生まれるには、大西洋か太平洋のどちらかが閉じなくてはならない。

大西洋が閉じた場合にできるのが、前者のパンゲア・ウルティマ超大陸だ。現在は拡大している大西洋がいずれ収縮に転じ、ヨーロッパ大陸と北米大陸の沿岸で沈み込み帯が形成され、最後に大西洋が消滅する。

反対に太平洋が閉じてアメリカとユーラシアがつながるのが、後者のアメイジア超大陸である。太平洋の両岸で起きているプレートの沈み込みが継続し、東太平洋海膨すら沈み込んでしまい、最後に太平洋が閉じるストーリーだ。

ちなみに、このケースでは日本列島はユーラシア大陸とオーストラリア大陸に挟まれて合体・消滅する。

いずれもプレート運動を正確にトレースした将来予測である。

こうして100年前にウェゲナーが扉を開けた「地球科学の革命」によって、何億年も先の地球の未来が予測できるようになった。

(本誌初出 2億~3億年後の「超大陸」 アメリカとユーラシアが合体?/38 20210209)


 ■人物略歴

鎌田浩毅(かまた・ひろき)

 京都大学大学院人間・環境学研究科教授。1955年生まれ。東京大学理学部卒業。「科学の伝道師」を自任し、京大の講義は学生に大人気。

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