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水素1 水電解装置 “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェクト=中園敦二

    旭化成の10㍋㍗級のアルカリ水電解システム 同社提供
    旭化成の10㍋㍗級のアルカリ水電解システム 同社提供

    “グリーン水素”の大量製造時代へ 世界で400超のプロジェクト

     水電解装置は風力、太陽光発電などの再生可能エネルギーにより生み出された電力余剰分で水を電気分解して水素に変換し、エネルギーを貯蔵することができる。グリーン水素を製造する市場でいかに高効率に水素を製造するか。水電解装置の需要が高まり、国内外の企業が参入している。

     新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)などによると、実用技術としては、(1)アルカリ水電解法、(2)固体高分子型(PEM型)水電解法──の2種類がある。アルカリ水電解法はスケールメリットがあり、特に大規模プラントで低コスト化が期待できる。PEM型水電解法は同じ面積に流す電流(電流密度)がアルカリ水電解法に比べて高いため装置を小型化できるが、部材が高価でコストがかさむ。ただ、最近の活発な研究開発で規模、コストとも差は縮まっているという。

    旭化成が世界最大級

     国内で注目されるのが旭化成だ。2020年7月に実証試験を兼ねて本格稼働を始めた水素製造施設「福島水素エネルギー研究フィールド」(FH2R)にアルカリ水電解装置を納入した。

     水を電気分解して水素を発生させる水電解装置は、消費電力が大きいほど、多量の水素を作り出すことができる。旭化成は、10メガワットという大きな電力で水素を発生させる装置を開発。単体の水電解装置としては世界最大級という。世界市場で高いシェアを誇る自社の食塩電解プロセスを流用して開発が可能となった。同社は装置のコスト低減と長期耐久性検証を続け、展開を狙う。

     日立造船はPEM型水電解法の装置を開発し、周辺機器を含めたシステムを販売する。同社は水素にCO2を加えてメタンを作る「メタネーション」技術の開発にも取り組む。

     三菱パワーは固体酸化物形燃料電池(SOFC)を扱っているが、SOFCの発電の仕組みを逆反応させて、水から水素と酸素を発生させることで、効率の高い固体酸化物形電解設備(SOEC)となる。今後、水電解装置への応用についても動きが出てくると期待される。

     国際エネルギー機関(IEA)などによると、20年6月現在、稼働中の水電解プロジェクトはドイツ、日本などで169件あり、アルカリ水電解法とPEM型水電解法がほぼ二分するが、プロジェクト規模についてはアルカリ水電解法が6割以上を占める。

     また、計画中のプロジェクト件数は公表されているものだけで現状の1.6倍の257件に上る。稼働中と合わせると400を超えるプロジェクトが存在する。

    EUだけで4兆円市場

     欧州連合(EU)の水素戦略は30年までに電解装置40ギガワット(1ギガワットは1000メガワット)・水素1000万トン製造を目標にしており、「電解設備コストは1メガワット当たり約1億円で、EUだけで4兆円の市場規模になる。世界的に見ても参入企業は増える」(大手シンクタンク)。海外勢はシーメンス(ドイツ)、Nel(ノルウェー)などが設置を進めており、コスト低減のため大型化を図っている。また、ITM(英)は住友商事と協定を結び、住商は日本での販売代理店となった。

     日本企業も海外で動いている。三菱重工業は豪州のH2Uインベストメンツ社へ出資し、同社が検討中の水電解事業に参画する。再エネから水素を製造して地域への供給を目指す。また、ドイツでバッテンフォール(スウェーデン)、シェル(英蘭)などと協働して、グリーン水素製造・供給・利用事業の実現可能性の検討を開始。閉鎖予定の石炭火力発電所跡地で100メガワット規模の水電解プラントを建設する。

     ただ、日本企業は「国内需要がほとんどなかったこともあり、装置の大型化に5年以上遅れている。このままでは欧米メーカーに太刀打ちできなくなる」(業界関係者)と懸念する声もある。

    (中園敦二・編集部)

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