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もうひと手間で段違いに味が良くなる? 「家飲みの味方」クラフトジンの「ほんとうの飲み方」

    世界市場も日本のクラフトジンに注目している (Bloomberg)
    世界市場も日本のクラフトジンに注目している (Bloomberg)

    ハイボールやマティーニ、モスコミュールなど数あるカクテルの中で、最も人気の高いカクテルは何か。

    日本バーテンダー協会の調べによると、その答えはジントニックで、20年近く第1位に輝いている。

    パーティーや洋風酒場、あるいは缶入りカクテルで試したことがある人も多いだろう。

    だが、自宅用にジンを買って帰ったことのある人は多くない。

    なぜかジンは外で飲むイメージが強く、自宅になかなか入らなかった。

    かくいう筆者も、2年前までひと夏に1本買うかどうかという程度だった。

    変わったのは「クラフト(手作り)ジン」との出会いからである。

    世界的な流行

    クラフトジンはスタンダードなジンと一線を画して、個性豊かな香りや濃厚な味わいで世界的なムーブメントとなっている。

    価格は1本、だいたい5000円前後で買える。

    パイオニアは2009年にロンドン市内に約200年ぶりに設立が認可されたシップスミス蒸溜所だ。3人の若者が古いレシピを忠実に再現し、じわじわと支持を広げていった。

    一般的なジンは、原酒にニュートラルスピリッツ(エタノールを95%以上に濃縮した無味無臭、無色の蒸留酒)と水を加えて軽快な味わいに仕上げて製品化されるが、クラフトジンの多くは加水して度数調整するくらいで原酒の味わいをしっかりと残す。

    ジンは梅酒のように蒸留酒にボタニカル(ハーブやスパイスなどの素材)を浸漬し、それを蒸留して香気成分を取り出す。

    利用するボタニカルと配分の割合、何にどれくらい漬け込むか、蒸留方法はどうするか、などで味わいはさまざまに変化する。

    クラフトジンはプレミアムな酒として世界中に波及し、日本では京都蒸溜所の「季の美」やサントリーの「ROKU」という傑作が誕生する。

    現在は各地の焼酎メーカーが、柚子(ゆず)や山椒(さんしょう)、茶、ショウガなど特産のボタニカルを使ってオリジナリティー溢(あふ)れる商品を続々と開発、世界市場を狙っている。

    世界のクラフトジン市場もこうした動きを歓迎しているようだ。

    一昨年、ロンドンにある「ビーフィーター」というジンを生産する工場を取材した時、広報スタッフから飲んでおくべき日本のジンは何かと聞かれた。

    続けて彼は、「季の美とROKUはよくできていた。他にも面白いジンがあるに違いない」とも話している。世界に出たいジャパニーズ・ジンを受け入れる市場があるのだ。

    クラフトジンの味わいに驚かされ、その成り立ちを知るうちにジンを好んで飲むようになった。

    だが、気軽に毎日飲むようになったのはクラフトジンではなく、ビーフィーターのようなスタンダードなジンだ。

    これを冷凍庫に冷やしておいて、食前にソーダで割って飲むのだ。

    ワインや日本酒のように料理にぴったり合うというわけではないが、幅広い料理に寄り添い、時に味わいをさっと洗い流してくれて、家飲みで大活躍する。

    基本は「1対3」

    これを加速させたのが昨春発売されたサントリーの「翠(SUI)」だ。

    季の美やROKUのお手軽版という感じで、和の柑橘(かんきつ)が他のボタニカルとバランスよくまとまっており、ソーダで割るだけで十分においしい。

    ジンのソーダ割り。いたってシンプルな飲み方だが、もうひと手間かけると段違いに味が良くなる。

    そのポイントは三つある。

    (1)しっかり冷たく仕上げること、

    (2)炭酸ガスを逃がさないこと、

    (3)自分の好みの割合を知ること

    ──だ。

    (1)は、ジンを冷凍庫で十分に冷やし、ロックアイスを加えて、冷えたソーダをゆっくり注ぎ入れる。

    マドラーでかき回さずに、浮き上がった氷をチョンと指で一度だけ押し下げてやればいい。

    こうすると10分間くらいは5℃以下の冷たさをキープして、解けた氷で味がシャバシャバになることもなく楽しめる。

    割り方は1対3を基準に、より濃い方が好きか、薄めが好きかを探る。

    アルコール度数40%のジンを1対3で割れば10%、1対4ならば8%である。

    さらに、国産の新鮮なレモンやライムを上手に使うとバーの味わいに近づく。

    柑橘はジュース(搾り汁)だけでなくピール(皮)が重要だ。

    輪切りやクシ形にカットし、そのまま、あるいは軽くひねってソーダ割りに落とし、ピールの香りや苦みを酒にまとわせる。

    ピールの油脂が入りすぎると味がくどくなるから、グラスから50~60センチくらい離れたところからピールを捻(ひね)って香りだけ飛ばすテクニックもある。

    こうしたソーダ割りの工夫は、ウイスキーハイボールやレモンサワーにも共通して使えるのでお勧めだ。

    家飲みにもオススメの「サントリージャパニーズジン翠(SUI)」サントリー提供(左)。適切なグラフを使えば、ジンもさらにおいしくなる。
    家飲みにもオススメの「サントリージャパニーズジン翠(SUI)」サントリー提供(左)。適切なグラフを使えば、ジンもさらにおいしくなる。

    さらに言えば、グレードの高い酒をベースにした方がソーダ割りはおいしくなる。

    例えば、グレードの高いウイスキーにはすでに複雑な香気成分が溶け込んでおり、密度の高い味わいに仕上げてある。これをソーダで割ると、アルコール度数が下がり溶けていられなくなった香気成分が揮発して、香りが一気に開く。

    香りが豊かだから、いつもより薄めに作っても十分に満足できるはずだ。

    最後に、ジンを楽しむグラスについて触れておこう。用意したいのは、胴が膨らんでいる「ワイングラス」と縦長の「タンブラー」の二つだ。

    クラフトジンをストレートで味わうならワイングラスに注ぎ入れ、くるくる回してジンをグラスの内側にしっかり広げてやる。

    グラスの膨らみの中でジンの香りが凝縮されて立ち上ってくる。

    タンブラーはソーダ割りを気軽に楽しむ時に使う。口に運ぶ際に角度がつくため、冷やしたソーダ割りを一気に喉まで運べる。

    二つのグラスがあれば、ジンに限らずたいていの酒をおいしく楽しめるだろう。

    (山田聡昭・酒文化研究所)

    (本誌初出 「手作りジン」を楽しむ お酒、割り方、グラス 三つの工夫で新しい家飲み=山田聡昭 20210309)

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