「ショーケースからケーキを選ぶ」はもう古い Cake.jpの高橋優貴社長が考える新時代の「ケーキ屋」とは
高橋優貴 Cake.jp代表取締役 冷凍ケーキで日常を彩る
「ケーキはショーケースから選ぶ」は当たり前ではなくなった。SNS時代のケーキ選びの新常識を作り出す。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=市川明代・編集部)
ケーキの総合通販サイト「Cake.jp」を運営しています。「店子」であるケーキ販売店の出店数は約1200店、商品の取扱数は約5000種です。「定番」「お子様向け」「パーティー」……といったジャンルの中から商品を選んでもらい、各販売店から冷凍ケーキを届けています。冷蔵庫で10時間ほどかけてゆっくり解凍すれば、スポンジも生クリームも、一般の生ケーキと区別がつかないぐらいにおいしく味わうことができます。(挑戦者2021)
人気は誕生日ケーキです。乳幼児向けのアレルギー対応ケーキ、甘さ控えめのケーキ、顔写真をプリントしたケーキ、キャラクターや乗り物をかたどったケーキ……。多様化・細分化した消費者のニーズに応えられるだけの商品をそろえていると自負しています。
以前から、「忙しくてケーキを買いに行けない」「満員電車でケーキを持ち運びたくない」という声がありましたが、新型コロナウイルスで通販需要が高まっています。2020年4~12月の売り上げは、前年同期の3倍でした。
ケーキの世界に大きな変化をもたらしているのが、SNSです。かつてはケーキ店に足を運び、ショーケースの中からケーキを選ぶことが消費者の楽しみの一つでした。インスタグラムや動画投稿サイトTikTok(ティックトック)の普及で、ケーキの箱を開けて切り分けるまでの驚きや感動を発信することに楽しさを見いだす人たちが増えています。SNSで映えるケーキの外観やパッケージデザインが商品価値になっているのです。
街のケーキ店にとって、コロナ禍は逆風ではありますが、オンライン上でこれまでとは違う形で消費者の目に留まることで、新たな商機が生まれる可能性があります。
出店者からは、一律20%の売上手数料を受け取っています。梱包(こんぽう)材費やトラブル対策費、アドバイス料やマーケティングコストが含まれます。ケーキのトレンドは、チーズケーキ一つ取ってもクッキーを多用したもの、中が半熟のもの……と、移り変わりが早く、小さなケーキ店では追い切れません。自社でニーズにマッチしたケーキやパッケージを開発し、余力のないお店に伝授しているのです。
崩れない製法も研究
大学でプログラミングを学びました。アルバイトでウェブコンテンツ制作ソフトを使った広告制作のビジネスを始め、卒業後そのまま起業しました。自社のサービスをPRしたくなり、特に未開拓の領域であると感じたケーキの通販事業を始めました。
当時はケーキの通販にニーズがなく、お花やお酒などのギフトに手を広げました。徐々にケーキの廃棄ロスや離職率の高さなどの問題点が見えてきて、17年に再びケーキに特化した通販サイトを開設したのです。最初は一軒一軒訪問して加盟店を増やしました。配送時に商品が崩れるなどのトラブルもあり、梱包材を改良し、脂肪分を減らすなどケーキを崩れにくくする製法も研究しました。
売り場を活気づけるため、有名ケーキ店からレシピの提供を受け、自社工場でオリジナルケーキの製造・販売もしています。「冷凍庫に、いつもCake.jpのケーキがある」を新常態にすることで、ケーキ業界全体を盛り上げていきたいと思っています。
企業概要
事業内容:ケーキの総合通販サイト「Cake.jp」の運営
本社所在地:東京都新宿区
設立:2009年4月23日
資本金:4億8480万円(資本準備金別)
従業員数:55人(アルバイト含む)
■人物略歴
たかはし・ゆうき
1986年愛知県生まれ。東京都立大学在籍時にプログラミングを習得し、2008年から個人事業主としてFlash広告の受託開発をスタート。09年4月、大学4年生の時にCake.jpの前身となるFLASH PARK(フラッシュパーク)を設立し、CEOに就任。自らエンジニアとして「Cake.jp」を構築。34歳。