日本のゲームは1、2世代前の商品でも海外で需要あり 過剰在庫を独自システムで流通させる
町田博 マッチングワールド代表 不良在庫を「必要在庫」に
ゲームソフトやトレーディングカードなどの在庫を匿名で売買できる「M-マッチングシステム」を開発、運用。売買が成立した商品を検品し、国内外に発送している。
(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)
過剰な在庫を売りたい人と買いたい人をつなぐマッチングサービスを行っています。売れずに残っている在庫は一般的に「不良在庫」と呼ばれますが、販売地域や買い手を広げてみれば、買いたい人がいます。私たちはそれらを売れ残りではなく、「必要在庫」と考えて、商品を欲しいという人たちに届けているのです。(挑戦者2021)
その橋渡しの方法が「M-マッチングシステム」という独自開発したウェブ流通プラットフォームです。在庫を抱える店舗や流通業者、メーカーが在庫情報をシステムに登録することで、買い手側が自由に閲覧、購入することできます。システムの利用は売買契約時の手数料のみで、その他の利用料などは一切不要。システムにはゲームやおもちゃ、キャラクターグッズなどが常時35万件以上登録されています。現在、国内外の売り手・買い手を合わせて約4000社が登録しています。
私たちのサービスの特徴となっているのが匿名性です。売り手は在庫処分に関する情報が流れるのを極端に嫌います。そういった情報は時に「在庫を抱えて経営状況が厳しいようだ」という風評被害につながり、場合によっては取引金融機関からの資金調達を難しくしてしまうからです。この不安を解決するため、当社のサービスでは売り手と買い手の間に入り、注文後の出荷依頼や代金支払い、商品発送などの業務を行うため、情報が外に漏れる心配がありません。
また、商品の検品も利用者の安心材料となっています。インターネットの取引では不良品が届くなどのトラブルがありますが、当社では商品の搬入時と搬出時のダブルチェックを人の手で行っているため、商品到着後のクレームなどがほとんどありません。
業界への「恩返し」
私がテレビゲームの販売卸会社を経営していたこともあり、取り扱い在庫のうち5割はゲーム関連商品です。システムのデータベースには日本で発売されたゲームやトレーディングカードの情報の99%を網羅しています。日本のゲームは海外での人気が高く、商品として魅力があります。例えば、東南アジアなどでは日本の1、2世代前のゲームソフトなどもいまだに需要があります。
ゲーム関連は私たちの強みですが、それ以外も充実させていきたいと思っています。具体的にはフィギュアや時計などに今後力を入れていこうと検討中です。
そもそも私が在庫マッチングサービスを広めたいと思ったきかっけは大量の商品在庫を抱えて倒産した自身の経験によるものでした。在庫を抱えるリスク、マッチングサービスの必要性を誰よりも痛感していると自負しています。安価なコストで参加できるサービスの提供も倒産で迷惑をかけたゲーム業界への「恩返し」の気持ちです。
今後の目標は会社の株式上場です。昨年10月に本社を移転して倉庫のスペースを1.5倍に増やしたのも事業拡大を見据えてのことです。現在の年商は約70億円なので、売上高100億円ぐらいになれば上場も視野に入ってきます。実現させたいですね。
企業概要
事業内容:在庫マッチングシステムの提供など
本社所在地:東京都中央区
設立:2001年6月
資本金:1億円
従業員数:42人
■人物略歴
まちだ・ひろし
1950年鹿児島県生まれ。鹿児島市立鹿児島商業高校卒業後、日本電信電話公社近畿電気通信局(現NTT西日本)入社。大手現金問屋の日経を経て、独立。83年にテレビゲームの販売卸会社を設立。6年で年商200億円を達成したが、過剰在庫が原因で黒字倒産。この経験から、生じてしまった過剰在庫を必要とする企業に販売するための橋渡しをする在庫マッチングサービスをスタートし、2001年創業。