経済・企業挑戦者2021

通販の男性化粧品部門トップを独走する「バルクオム」

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

野口卓也 バルクオム代表 男子、美容に目覚めよ!

 ここ10年ほどで年1〜2%増と緩やかに拡大を続ける男性化粧品市場。その成長市場で、通販の男性化粧品部門でトップブランドの地位を築いているのがバルクオムだ。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=加藤結花・編集部)

8月には旗艦店が新宿にオープンした バルクオム提供
8月には旗艦店が新宿にオープンした バルクオム提供

 スキンケア、ボディーケア製品などを販売する男性向け化粧品メーカーです。スキンケア初心者の男性が主なターゲットで、「やさしく洗顔して、しっかり潤し、乳液でふたをする」というスキンケアの基本に従い、品質の良い商品を提供しています。近年、美容に対する男性の関心は若者を中心に高まっており、当社の製品のユーザーも約6割が20代、30代の男性です。また、コロナ禍の影響でリモート会議が活用されるようになり自分の顔を見る機会が増えたことで、若者だけでなく、身だしなみとしてスキンケアに興味を持つ人も増えています。(挑戦者2021)

 あまり美容知識のない男性が迷わなくていいように商品はカテゴリーごとに一つのみ。泡立ちとほどよい洗浄力が売りの洗顔料や、頭皮をもみ込むように洗えるジェル状のシャンプーなどが人気です。開発に当たっては、男性がしっとり系よりもさっぱり系の感触を好むといった傾向などを考慮し、製造工場の担当者らと意見をぶつけ合い、ユーザーからの評価をフィードバックして作りました。

 スキンケアは筋トレと同じで継続することで効果が期待できるので、続けて使いやすい2000~3000円が中心の価格帯です。

 こういった分かりやすくて高品質な商品や黒と白を基調とした洗練されたブランドイメージなどが評価され、通販の男性化粧品部門ではトップを独走しています。

世界で戦える事業

 両親が会社を経営していた影響で、子供の頃から自分も会社を作りたいという目標を持っていました。高校を卒業したらすぐに起業するつもりでしたが、「大学に進んでほしい」と言われて進学しました。しかし、興味はやはりビジネスの世界にあり、3カ月で中退しました。漫画が好きだったこともあり、2009年に電子書籍のアプリで事業を始めましたが、当時はまだアプリへの課金文化などが根付いておらず、うまくいきませんでした。

 その後、フリーランスのサイト制作などで仕事をしていましたが、「起業するためにリスクを取って大学を中退したのにこのままではいけない。もう1回フルスイングで世界で戦える事業を興そう」と決意しました。

 男性化粧品を選んだのは、国内で始める優位性があり、市場が成長基調で、圧倒的ナンバーワンの企業が不在という条件が整っていたからです。人生を懸けて世界で戦っていける事業をしたいと思っていたので、いろいろな事業アイデアを検討しました。その結果、「これならいける」と勝算があったのが男性化粧品でした。私自身がもともと化粧品に詳しかったわけではありません。しかし、それが弱みにはならず、化粧品の常識や知識がなかったからこそ自由で新しい発想で事業ができたと思っています。

 8月には眉毛を描くのためのアイブロウ、肌荒れなどを隠すコンシーラーなどの商品の販売を開始しました。男性化粧品のユーザーは現状では少数派ですが、5〜10年後には男性のメークユーザーの比率も高まっていくと思います。新しい挑戦であるメーク事業は長期戦覚悟で仕掛けています。


企業概要

事業内容:男性向け化粧品の企画、販売

本社所在地:東京都港区

設立:2017年5月

資本金:9000万円

従業員数:51人


 ■人物略歴

のぐち・たくや

 1989年、東京都生まれ。慶応義塾大学環境情報学部を中退し、ITベンチャーなどを創業。2013年、メンズスキンケアブランド「BULK HOMME(バルクオム)」を立ち上げる。17年、MBO(経営陣による買収)で事業を買い取り、バルクオムを設立。オンラインのほか全国4000店舗以上の小売店などで販売する。

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