食のインフラ調理ロボ開発=テックマジック白木裕士社長
白木裕士 テックマジック(TechMagic)代表取締役社長 食のインフラ調理ロボ開発
外食産業向けに調理ロボットを開発するテックマジック(TechMagic)。人手不足を助け、熟練の調理技術を再現する“料理の鉄人”を目指す。
(聞き手=中園敦二・編集部)
パスタメニューを自動で調理するロボットを、プロントコーポレーションが年内にオープン予定の新業態のパスタ専門店に納入します。我々は工場を持っていませんが、厨房(ちゅうぼう)機器などのハードから、それを稼働させるソフトウエアまですべての調整を手掛けています。(挑戦者2021)
このような一気通貫の調理ロボは日本初だと思います。例えばパスタですと、店員さんから注文を当社のアプリで受け、調理ロボは冷蔵庫から麺を湯麺機に入れ、その間別の冷蔵庫に入っている具材をフライパンに入れてIH加熱器で混ぜ合わせ、最終的に湯切りした麺とあわせてでき上がり、という一連の調理作業を途切れなく、人間がやるより半分の時間でできるのが特徴です。
この間、一連の工程はAI(人工知能)を活用し、問題なく調理できているかをチェックしています。
調理ロボの開発は2018年から始めました。顧客企業の期待する効率化と、ベテラン調理人のノウハウをデータ化して同じ味を再現させるために、調理器具の形状やロボの動作を最適にすることに苦労しましたが、社員の多くが経験豊かなエンジニアなので作り込みました。完成機は4代目となります。
調理ロボは「ゆでる」「炒める」「揚げる」「焼く」の調理モジュール(まとまりのある機能を持った部品)を組み込んだ開発を進めており、ファストフードを含めさまざまな外食業態に対応していきます。
また、調理ロボとは別に業務ロボットもあり、工場内での盛り付け、洗浄など顧客企業ニーズのある自動化領域で開発しています。
ロボ導入によって1~3人の省人化につながると想定しています。ロボはレンタルかリースにして、コストは時給換算すると1人分の最低賃金よりも下回る計算です。国内大手食品企業と協働し、また別の海外企業とはグローバル展開を考えています。
「徳を積め」と言われ
2017年に、一人暮らしの90代の祖母の自宅に遊びに行ったときでした。テーブルの上にはコロッケなどがあって栄養に偏りがある食生活を送っているのが分かりました。本人もいろいろなものを食べたがっているのにできない現状をみてこれを解決したいと思いました。ただ、シニア層の他に単身、共働き世帯など調理がおっくうだったり、時間がなかったりする人たち向けの調理ロボは、費用対効果の点で導入は無理です。だったら、外食産業で食のインフラを造れないかというアイデアが浮かび、起業しました。
外食産業には三つの課題があります。店側は人手不足、低利益率、そして客側は生活習慣病の予防です。ロボ導入によって人手不足が補え、生産性も上がる。さらに、糖尿病など個人の栄養管理に合わせて「塩分控えめ」とかのメニュー対応もできるのではないかと思ったのです。さまざまな業態で調理できるロボを開発することで課題を解決させたいです。
事業をしていた祖父から「世のため人のためになる道が最高の道。徳を積め」と小さいころからいわれました。いまもその言葉を念じています。
企業概要
事業内容:調理ロボット、調理関連作業を自動化する業務ロボットの企画から設計・製造・販売など
本社所在地:東京都江東区
設立:2018年2月
資本金:11億2600万円
従業員数:34人
■人物略歴
しらき・ゆうじ
1987年生まれ。2015年に経営コンサルティンググループに入社し、通信・製造業を中心に新規事業、グローバル戦略、組織改革などのプロジェクトを経験。2018年にテックマジックを設立。34歳。