経済・企業挑戦者2021

宮下晃樹 カーステイ代表 キャンピングカーを身近に

撮影 武市公孝
撮影 武市公孝

 1年のうち350日は駐車場の“物置”と化しているキャンピングカーを有効利用し、人と場所までを一気通貫でつなげるシェアリングサービスを展開する。

(聞き手=藤枝克治・本誌編集長、構成=白鳥達哉・編集部)

カーステイのアプリ画面 カーステイ提供
カーステイのアプリ画面 カーステイ提供

 スマートフォン用アプリ「カーステイ」を開発し、キャンピングカーと、それを止めて利用する場所という、二つのシェアリング(共有)サービスを展開しています。キャンピングカーのオーナーと借りたい人、利用する場所のオーナーと借りたい人をそれぞれつなぎ、借りたい人が支払う料金のうち一部を手数料として当社の収入とする仕組みです。(挑戦者2021)

 キャンピングカーは、1年のうちで利用されるのは大型連休などに限られることが多く、中には年間350日は駐車場で荷物置き場にしているオーナーもいます。そこで、使わない時間は借りたい人に貸せば、維持費を稼ぐことができます。登録オーナー数は現在180人ほどですが、納車を待って登録したいという人を含めれば500人ほどになります。

 通常のレンタカーでは、借りられる車種は1~2種しかなく、料金も1日2万円程度からですが、私たちのサイトなら車種もさまざま。多いのはバンタイプのキャンピングカーで、1日のレンタルで安いものなら3000円程度から借りられます。三井住友海上火災保険と共同でカーシェア型の保険も開発していて、オーナーも安心して貸し出せる仕組みを整えました。

 また、オーナーと直接やり取りができるのも売り。オーナーは良い意味で世話焼きの人が多く、車の使い方だけでなく、お勧めの旅のスポットなども親身に教えてくれるので、キャンピングカーに初めて乗る人でも安心して利用できます。バーベキュー設備やキャンプチェア、ランタンなどオーナーが保有しているキャンプ用道具も別料金で借りられます。

 一方、場所のシェアリングは、土地のオーナーが空き地などの遊休地をキャンプ場、車中泊スポットとして貸し出すサービスです。全国約260カ所のスポットを紹介しており、利用料は安い所だと1泊約1000円から。火を起こせるかどうかなど、それぞれの場所ごとに利用条件がアプリ上であらかじめ示されていて、ホテルや一般のキャンプ場などとは違った非日常を楽しめます。

起業家の熱に感化されて

 監査法人トーマツに勤務していた時代、スタートアップ企業のIPO(新規株式公開)支援事業を担当したことが転機になりました。起業家たちの泥臭くも熱い思いに触れ、自分自身も起業したいという思いが強くなり、2016年に退職。まずは訪日外国人向けに何かできないかと、観光ガイドのNPO法人「SAMURAI MEETUPS」を立ち上げました。

 その過程で、「ガイドブックにない秘境に行きたい」「キャンプがしたい」という希望が出てくるようになり、現在の事業を始めることにしました。キャンピングカーはバンタイプだと本体価格が1台200万~700万円くらいと高値なため、20~30代を中心に少人数のグループやカップルの旅行などで手軽にキャンピングカーを利用してもらっています。

 今後は、上場を一つのゴールに見据えています。ゆくゆくはキャンピングカーのあらゆるサービスを提供するプラットフォームを作り上げ、人々のライフスタイルが変わるような事業にしていきたいですね。


企業概要

事業内容:キャンピングカー関連シェアリングサービスの運営

本社所在地:横浜市

設立:2018年6月

資本金:4494万5001円

従業員数:25人(役員・業務委託含む)


 ■人物略歴

みやした・こうき

 1992年東京都生まれ。2014年慶応義塾大学経済学部卒業。在学中に公認会計士試験合格、16年監査法人トーマツに入所し、公認会計士登録。同年に、訪日外国人を対象にガイドサービスやメディア発信を行うNPO法人「SAMURAI MEETUPS」を創業。18年6月カーステイを設立、29歳。

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